第12話 案内人は見た
「は、話が盛り上がってしまいましたので、お茶のお代わりを持ってきますね。」
クサカベがそう言って、逃げるように部屋の外へと去ってゆく。
「少し気にしすぎてるんじゃない? じ・ょ・お・う・さ・ま。」
「・・・そうね。異世界の見慣れないものを色々と目にしたせいか、戦いのことは聞き逃せない気持ちになってしまったわ。」
少し冷静さを取り戻した様子で、ひいかがため息をついた。
「でも、クサカベさんも良いことを言っていたわよね。私達の世界に広まったら危ないから、教えられないと。」
「そういう考え方をしているのね・・・いえ、『賢者』もその辺りは気を遣っているかしら。」
「ええ。あの子は身の安全もあるでしょうけど、悪用されると危険そうなものは、絶対に他人に伝えようとしないものね。」
「『剣士』も一緒に考えて線引きをしてるみたいだから、本当にきっちりしているわよね。」
ひいかはその辺り、緩いところがあるからね・・・まあ、この女王様が厳しい性格だったら、今ここで私達がこんな会話をしていることも無いから、悪いことばかりでもないけれど。
「まあ、考え方がそれぞれ違うのは仕方ないから、二度とここに連れてきてもらえない・・・なんてことがない程度に、気を付ければ良いんじゃないかしら。」
「あら、みいかがなんだか優しい。いつも手を繋いでお出掛けしてた、子供の頃に戻ってくれたのかしら?」
「・・・何か言いましたか、女王様?」
「そういうのは嫌!」
ひいかが私の腕に抱き付き・・・むしろがっちりと固めつつ、上半身を寄せてくる。うん、こうなるととても面倒だ。それから、私は従者として冷や冷やしながら付いていってたんだからね。
「今日は休みだから、敬語は禁止って言ったはずなんだけどなあ・・・」
「はいはい、どこかの誰かが人を茶化すようなことを言わなければ、良かったと思うけどね。」
「ふふっ、ちょっと照れてるみいかも可愛い・・・!」
「今から全部敬語にするわよ。」
「いーや!」
「お待たせしました、お茶のお代わりを・・・・・・」
ちょうどその時、クサカベが部屋に戻ってくると、そのまま氷魔法でも身に受けたかのように動きを止めている。
「ああ、ありがとう。もう少しで体勢を戻すから、そこに置いてもらって構わないわ。」
「は、はい・・・・・・私、消されたりしないよね? 異世界の人達がこういうことに緩いだけだよね?」
反射的にひいかに答えた後、小声で何か言い出したので、訂正しておいたほうが良いだろう。
「えっと、クサカベさん? これを見られたからといって、あなたに危害を加えるつもりは一切ないけれど、私の基準でも少し恥ずかしいからね? 誰かさんが緩みきってるだけで。」
「そ、そうなんですね・・・・・・疲れていらっしゃるんですか?」
「まあ、とても忙しかったので・・・」
「あっ、はい・・・異世界に縁のある方が、皆さんこうというわけではないんですね。」
「『賢者』と『剣士』の仲が良いところでも見た?」
「ま、まあ、そんなところです・・・」
うん? 他にもあるような口ぶりだけど、ようやくひいかが腕を離してくれる気配を見せたから、この話題を引き延ばすのは止めておこう。
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