チャプター12 メイキング≪成就≫(1/3)
映画文化が花開いた20世紀から長い時が経ち、いっときは人工知能との共同制作が主流となったが、これ以降の時代においても、ノウハウと基本的手法自体は大きく変化していない。
序破急の半分以上に登場する主要人物の
体調不良を理由として。
何者も文句をつけることはなかった。
しかし、
撮影開始からひと月が過ぎ、都市外の山間部からは強く
待ちに待った
あいにくと、その登場のシーンは不気味に暗い私室から始まり、病人然とした小鷹
「ねえねえ、しずりんっ! 似合ってるかな?」
脚本の目論見に反し、セットの外側で意気揚々とはしゃぎ回る
しずりに着せ替えをさせた
「うんうん。イメージ通り。でもちょっと元気すぎるかね……」
畏怖のかけらも見当たらない、活発な姿を前に、しずりが苦笑する。
「か、かわいいかな……?」
「かわいいって何だよ」
「もう、真面目に
また、
「前から気になってるけど、みすぅはさ、かわいいかどうか気にしてるじゃん。なんで?」
「なんでって。そんなにおかしいかな」
しずりの問いかけに、
「おかしくはないけども。人間をかわいいって評すると、それは性表出に当たるじゃない? ぼくたちは本流を同じくする≪スキン≫だ。相対的な評価は、するべきじゃないと思う。今はいいけど……次のみすぅが
しずりは、
「みすぅの態度見てるとさ、不安になる。このまま
そのとき、
かつてしずりが死に、
しずりは講義に遅れまいとして、長い髪を
しずりの行動を見た
『もっと自分の体、大事にしてよぉ』
『しずりんが傷ついたり、また急にいなくなったりするのもこわいの!』
回顧した自身の言葉が、
2人の
ただし――
とっさに、持ち込みのカバンへ飛びつき、中から薄桃色に変色したシルクスカーフを取り出す。
「心配させて、ごめんね。
「えっと……やっぱり最初くらいは、映画の主役みたいに死なせてほしくて。
「……ははっ、なんだよ。カッコいいじゃん。分かったよ」
しずりはそのように返すと、
やがて、映文会員の1人から
直後にしずりは、
しかし途中でみずから制止した。
「行ってらっしゃい」
「うんっ! あと、やっぱり『カッコいい』より、『かわいい』がいいな。
「はいはい」
しずりに軽くあしらわれながら、
スタジオに入った。その瞬間、
少女は、使用感のある干からびたベッドに腰を据えた。
少女の姿に対して、しずりは苦しげに息をのんだ。
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