第39話 先生達の過激な指導に頭を悩ませる

「こんにちは、拓雄君」


「あ……こんにちは」


 翌日、夏期講習のためにまた学校に来た拓雄が廊下を歩いていると、部活の指導をしていた彩子がエプロンを身に纏った姿で声をかける。


「くす、今日も夏期講習だっけ? お疲れ様」


「はい。明日までですけどね」


 いつもと同じ、穏やかな笑みで彩子が拓雄にそう話しかけていき、徐々に近づいて来る。


「そう。ねえ、ちょっと先生と準備室に来てくれない? 手伝ってほしい事があるの」


「? あ、はい」


 何だろうと思い、彩子に言われて、彼女の後を付いて行く。




「入って」


「失礼します。あの。何を……んっ!」


 美術準備室に入ると、彩子がすぐにドアを閉めて、拓雄に抱き付き、いきなり口付けを交わしていく。


「んっ、んん……んっ、ちゅっ、んんっ!」


 突然の彩子の大胆な行動に、拓雄も目を見開いて驚いて、頭が真っ白になるが、彩子は構わず、キスを続けていく。


「んん……んっ、んん……はあっ! くす、ごめんね、いきなりキスして。でも、先生、どうしても我慢出来なくて」


「あうう……」


 いきなりの情熱的な接吻を受けて、拓雄も目を回していたが、彩子は頬を紅潮させて、彼の体に密着し、潤んだ瞳でそう口にする。


 いつもおっとりとしていた彩子は、普段とは別人の様に色っぽく感じてしまい、純真な拓雄には目に毒な位であったが、彩子はそんな幼い生徒に更に追い討ちをかけるように、彼の胸に顔を預け、


「くす、先生ねー。あなたに僕の彼女ですって言われて凄くうれしかったの。三人ともってのが付いていたけど、いつかは先生の事を選んでくれると嬉しいなあ。ちゅっ、ちゅっ、んちゅっ!」


「あ、あの、もう……」


 撫でる様な甘い声で、彩子がそう囁きながら、困惑している拓雄に頬にキスをしてそう迫ってくる。


 学校でこんな事をしてるのを見られたら、彩子は解雇どころでは済まないのだが、もうお構いなしに、彩子は拓雄に迫り続け、このまま押し切ろうとしていたのであった。


「あん、先生とこうするの、そんなに嫌?」


「い、嫌じゃないですけど……学校では……」


「学校じゃないなら良いんだ。じゃあ、今度、先生の家に遊びに来て。住所教えるから、来てくれると嬉しいなあ」


 とにかく早く帰してくれと涙ながらに訴えていた拓雄から彩子はようやく離れて、住所を書いたメモ帳を彼の鞄の中に入れる。


 来てくれるかはわからなかったが、とにかくこれで距離が縮まったと彩子も舞い上がっており、拓雄もやっと開放されそうだと安堵していた。




 トントン。


「――っ! はいっ!」


「真中先生、いますー?」


「何だすみれ先生ですか。どうぞ」


「失礼します。げっ!」


 突然、美術室のドアがノックされ、彩子もビクっとするが、すみれである事がわかると、また拓雄に抱き付き、すみれに見せ付けていく。


「な、何をやってるんですか、こんな所で?」


「見ての通りですよ。男子生徒と美人教師の放課後の秘密の補習授業って所です♪」


「何が秘密ですか、全く。あんたも、真中先生に言い寄られて、デレデレしてるんじゃないわよ」


「すみません……あの、彩子先生、もう……」


「あん、良いじゃない。それより何の用ですか?」


「一緒にお昼食べようと思ったんですけど、お取り込み中だから、また後で……何て言うわけないわ。ほら、拓雄も私らを全員、自分の女にするとか調子こいた事を言ってんじゃないわよ、ええ?」


「はうう……」


 彩子から拓雄を引き離したすみれが彼の股間を手で擦りながら、耳元でなじっていく。


 しかし、すみれも自身の胸を背中にくっつけて擦っていき、完全なセクハラ行為を生徒に対してしており、拓雄も顔を真っ赤にして、呻いていた。


「んーー、真中先生にいやらしい事をしてたお仕置きよ。本当なら、停学だけど、この程度の罰で済ませてるんだから、感謝しなさい。んっ、れろ、はむう……」


「うっ!」


 すみれが拓雄の耳たぶを口にくわえてしゃぶり、そして頬を舌で舐めていく。


 立て続けに、女教師達にセクハラをされ、拓雄も困惑していたが、ここから逃げる事も出来ずにいた。


「ちょっと、止めて下さいよ。拓雄君は私の彼氏なんですから」


「この子は皆の物でしょう。いえ、私ら三人が、拓雄の物になったのよね。ええ、この色男。性犯罪者。どう責任取る気?」


「そ、そんな事を言われても……」


 すみれが後ろから抱きついて、尚も股間を手で弄り、無垢な男子生徒をなじって弄ぶが、彩子と同じで、もう教師としての一線を超えていたすみれも最早、遠慮などせず、思い思いに拓雄を弄んで体を擦り、彼の理性を削いでいたのであった。


「拓雄君は私の物なんですう。ほら、来て」


「あ、ちょっと引っ張らないでよ」


 嫉妬した彩子が拓雄の腕を引っ張り合い、二人に引っ張られ、揉み合いになる。


「ねえ、この前、私達を僕の女にするっての、冗談で言わせたと思った? ふふ、甘いわよお。男なら一度言った事には責任を取りなさい。このままだと、先生たち、あんたが卒業する前に、妊娠しちゃうかもしれないわ」


「に、妊娠っ! いやあん、まだ早いですよ、そんなのっ! でも、拓雄君の子供なら、今すぐにでもほしいなあ、なんて」


「ちょ、冗談は……」


 二人が教師とは思わない、下劣極まりない言葉を生徒に向かって堂々と口にし、拓雄も彼女らの『妊娠』と言うキーワードを耳にして血の気が引いてくる。


 まさか本気では言ってないだろうと思いながら、もしそんな事態になれば、彼の人生が破滅してしまうのが目に見えていたが、彼女らの顔を見ると冗談とも思えず、悪夢を見ているとしか思えなくなっていった。




「何をしているの、ここで」


「あ、ユリアちゃんも来たんだ。へへ、見ての通りですよ」


 すみれと彩子に襲われている最中に、ユリアも準備室に入って来たので、彩子もまた拓雄を胸に抱き寄せる。


「男子生徒を学内でハグする。あなた達、冗談でもこんな事をしているのバレたら、どうなるかわかっているんでしょうね?」


「ふん。今更って感じだしね」


「開き直らないでちょうだい。彼が嫌がっているのだから、止めなさい。あなた達も嫌われたくはないでしょう」


「はーーい。んじゃ、お昼食べようか。拓雄君も一緒する?」


「いえ、僕は……」


 ユリアに咎められ、ようやく二人が拓雄から離れ、彼も安堵の息を漏らす。


 普段は冷たい印象のするユリアが、今や天使にすら思えてしまい、彼女に


「拓雄、わかっていると思うけど、今、ここで私らがした事、誰にも言わないでよ。言ったら、先生たちクビになっちゃうから。私らがクビになってほしい?」


「いえ……」


 準備室を去ろうとした拓雄の腕を引いてすみれがそう釘を刺し、拓雄も首を横に振る。


 別に彼女達にクビになってほしくはなかったので、誰にも言う気はなかったが、このままでは拓雄も学校に来るのが辛くなるばかりであった。


「前にも言ったと思うけど、先生達に学校を辞めてほしいと思うなら、すぐに告げ口なさい。そうでないなら、黙っている事ね」


「はい……」


「じゃあねー、拓雄君」


 ユリアにそう言われて、拓雄も力なく返事をし、準備室を去る。


 三人に学校を辞めてほしくはないが、今のままでは拓雄自身が持たなくなるのが目に見えており、彼も肩を落としながら、家路に着いていったのであった。


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