契約婚のはずなのに、腹黒王太子様に溺愛されているようです

星 月乃

第1話

「私と契約結婚しませんか?」

「へぇ……契約結婚ねぇ」


私リリカは今王太子レイリックに契約結婚を持ち掛けているところだ。


そこから時は遡り、、、


「ここはどこ!?」


私は目が覚めると全く見知らぬ場所にいた。質の良い布団、部屋には豪華絢爛な装飾品。そして、鏡を見ると銀髪の美少女が立っていた。


「もしかして私? いやいやっ、これは夢よね!!」

うん。こんなところ知らないし、夢に決まってるわ。

そう思った瞬間、

「っ!!」

頭の中に映像が流れ込んできた。これはこの子の記憶?


そうよ。今の私はリリカ・エバルディ。エバルディ公爵家の令嬢。転生ものの小説とかたくさん読んでいたけれど、まさか私が転生することになるなんて思わなかったわ。でもこの世界には魔法があるのよね。ファンタジー好きの私からしたら、そんな世界に転生出来るなんて最高じゃないっ!!


「お嬢様、お目覚めですか?」

「おはよう、レイナ」

レイナはリリカの専属侍女で艶のある美しい紫色の髪の女性だ。


「おはようございます。こちらモーニングティーでございます」


喉が渇いていたこともありゴクリと飲んだが

「っ!!」

これは!! そうよね。ここは異世界。当然紅茶よね。でも一応は飲めるのはどうしてかしら?


前世では紅茶は砂糖を入れないと飲めなかった。いや飲めるのは飲めたが美味しくなかったのだ。子ども舌だったから。子どもは甘いものが好きなものだ。砂糖を入れて甘くして飲んでいた。だからおやつとして、ジュース感覚で飲んでいた。それが今は何も入れずに飲めている。それはこの身体になったからだろうか。


異世界だからって無条件に喜んじゃったけど、でも日本茶が恋しい……。あの美味しいお茶が飲みたい!!


前世の記憶を思い出した以上、身体が日本茶を求めている。


「どうかされましたか?」

「いえ、なんでもないわ。下がってちょうだい」

「はい。お嬢様」


今後のことを考えなくちゃ。

リリカは公爵令嬢として完璧な教育を受けていたこともあり、様々な国の知識を持っている。この世界には日本はない。魔法もあることから全く違う世界線だ。しかし、日本と似ている国自体は存在する。それが東方諸国だ。そこにもしかしたら日本茶のようなお茶が存在している可能性がある。だが、リリカの記憶には東方の茶葉はなかった。


早速、調べてみましょう。


公爵家には大きな図書室があり、何万冊と所蔵されている。


「東方……東方……っと。あった!!」


東方の植物辞典を見つけた。それは確実に数百ページはあるとても厚い本だった。きっとこれに書かれているはずだ。


「重っ!!」

公爵令嬢だから体力がないの!?

確かに今まではレイナに任せっきりだったけれど……。体力もつけないといけないわね。


どうにか部屋まで持って帰ることが出来た。


しばらくして、、、

「全く見つからなかったわ」

植物辞典を隈なく確認してみたがどこにも茶葉が見当たらない。

いえ、このどこかにあるのかもしれないけれど、説明が雑っ!!

植物の絵と生えている場所が載っているだけ、これだけで分かるかっ!!

はっ……。

横からレイナの視線を感じる。

危ない危ない。つい心の声が口から飛び出すところだったわ。


豊富な知識を持っているリリカの記憶にも茶葉どころか植物の知識自体ほとんどない。


公爵令嬢だからだと思っていたけれど、たぶんあれよね。辞典の情報量が少なすぎて覚える意味が全然ないからだわ。


「うーん、どうしようかな」

「どうかされましたか? お嬢様」

「あっ、えっとね、東方諸国で売られている茶葉がほしいんだけど」

「茶葉ですか。そもそも東方の国は遠すぎるので両国間の貿易もあまりしていませんからね。機会があるとするなら、一年に一度、商人の方が東方諸国から売りに来られるときですね」

「次はいつなの!?」

「正確なことまでは。ただ毎回、今の時期で一週間ほど滞在されるそうですよ」

「!! 早速行かないと!!」


そうして、リリカはその商人が毎回商売を行っているという港に慌てて向かったのだが、地元の人々の話ではまだ来ていないらしい。リリカは商人に会えるまで足繁く通うことにした。


1ヶ月後、その商人にようやく会うことが出来た。

長かった。しかし、

「これだけ……ですか?」

「はい。申し訳ありません。他の茶葉は生産量が少なく」

1種類の茶葉しか販売されていなかったのだ。

でもまあ、ないよりはいいけど。


リリカはその茶葉をとりあえず1袋購入し、屋敷に戻って来た。


「さあ、レイナ。早速淹れてちょうだい」

「はい」


「ご用意出来ました。しかし、こちらの茶葉は初めてですので上手に淹れられたかは……。申し訳ありません」

お茶は淹れ方によって味が変わる。急に頼んだことだし、それは仕方のないことだ。


「いえ。ありがとう」

ゴクッ

「っこれは!! 美味しいっ」

ゴクリ

「これよっ!! これを求めていたのよ!!」

リコルテは前世のほうじ茶と同じ味だった。


「それは何よりです」

後は緑茶もあれば良いのだけど。

「さあ、明日も買いに行くわよ」

「はい。お嬢様」


そして、リリカはきっちり1週間毎日買いに行った。


「こんなに売れたのは初めてですよ」

「そうなの?」

「はい。いつもは見知らぬ商品ばかりだからか全然売れないんです」

確かに人は初めて見るものは警戒するものだからそうでしょうね。

「でも、それなのに毎年販売を?」

「はい。楽しみにしてくださる方もいらっしゃいますから」

「そうね。私も楽しみにしているわ」

「ありがとうございます」


「さてとしばらく分の買い溜めは出来たけどさすがに後1年間は持たないし、何か考えないと」


屋敷に戻ったリリカはベッドに寝転がりながら、考えていた。


「お嬢様?」

「ああ、いえ。リコルテをどこかで手に入れられないかなと思ったのよ」

「そうですね。リコルテは他では販売されていませんし、後は王宮で育てられているぐらいですからね」


ガバッ

レイナの言葉を聞いたリリカは勢い良く起き上がる。


「それ本当なの!?」

「はい。リコルテもそうですが王宮では他にも珍しい植物を多く育てているとか」


もしかして、王宮には緑茶も?

はっ!! いいこと思い付いたわ。


そして、現在に至る。

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