レポートの行方

ファイル

2022年9月7日

　ふとパソコンの取材ファイルを整理したいと思い、不要なファイルを閲覧しながら削除する。

　これらは、ファイル内の動画の音声を文字に起こしたもの。

　動画ファイルA「強盗事件についてお伺いしたいのですが、あなたが第一発見者ですか？」

「まず、入口近くのSOSの時のランプみたいなものが光りましてね、すぐに通報したんですよ。その瞬間犯人らしき人が走って逃げていって。警察も来て僕も話聞かれて答えましたね。それぐらいかな。」

「ありがとうございます。」

　動画ファイルB「こちらの学校で失踪した○○○○さんについて聞きたいことがありまして。普段どういう生徒でしたか?」

「となりのクラスだったけど、あまり目立たない子って感じ。よくいじめられていた印象で、休んだ日でもスマホに大量の嫌がらせメールが送られてきたって噂もあるよ。そりゃこんな事になっちゃうよね。」

「捜索に何か手がかりになるものはないですか？」

「いや~今はないです。」

「そうですか、分かりました。」

　動画ファイルC「様々な物価が値上がりしていますが心境をお聞かせ下さい。」

「本当辛いよね。値段そのままでも中身が少なくなっているやつもあるし困ったわ。チラシで少しでも安いスーパー見つけたら、ちょっと遠くてもわざわざ自転車で向かって買いに行ってる。」

「そうですか。大変ですね。ありがとうございます。」

　音声ファイルD「…事件がここで…どう思…すか？」

　音声にノイズが入っていた。バグなのかと思っていたがもう一度再生する。

　「…事件がここで…どう思…すか？」

　「…早く、早く、…、早くこっちへ…」

　廃ホテルで聞いた声だ。その瞬間寒気が一気に押し寄せ、すぐに削除した。何か取り憑かれているのだろうか。その夜は一睡もできなかった。