肝試し

2022年8月11日

 □□県□□市山沿いにそびえ立つ廃ホテル。地上5階建ての一般的なホテル。周りは何もなくホテルだけ。立入禁止の看板があるにも関わらず、肝試し感覚で侵入する者が後を絶たないという。私はその情報を聞きつけ管理者の許可の下、廃ホテルの入口付近で見張る事にした。

午後11時45分頃、黒い軽自動車が入口付近に止まる。車から降りたのは若者の男女4人。すぐに呼び止めた。

 私「私○○と申しますが、今から何しに行くんですか?」

 若者1「いや、ちょっと探検しに行こうかなと。」

 若者2「泥棒とかじゃないから。ただここに来ただけだから。」

 私「この建物は管理者がいるので勝手に入ると不法侵入になりますよ。」

若者2「大丈夫、大丈夫。すぐに帰るんで。あまり邪魔しないで。」

 実際話したのは2人だけ。若者4人は私を振り払うかのように中へと入っていった。実は建物内の立ち入りも許可を頂いたので急いで後を追った。

 若者が入ってそこまで時間が経っていないのに、どこにいるか分からなくなってしまった。人が動く音が無く、かすかな風の音しか聞こえなかった。

 2階へ上がると客室フロアだ。じめっとした嫌な湿気が体にまとわりつく。しかし誰もいない。とっさに「誰かいませんか?」と大きめな声で言う。反応はない。

 数十分後、女性の悲鳴が聞こえる。すぐに「大丈夫ですか。」と叫ぶも返事なし。道路付近の窓から外を覗くと、同時に若者達が一斉に建物から出ていき、車へ乗り込み急発進させ逃げてしまった。

 私は恐る恐る1階へ戻ろうとした。すると廊下の後ろから

 「お前、早くこっちへ。」

 と男の声が聞こえ、私も怖くなり逃げ出した。逃げている最中にも、パチッという音が数回ありパニックになった。

 何とか車に乗り、最寄りのコンビニへ立ち寄り廃ホテルについて考えていた。心霊的な噂は多少あるが、なぜあの声が聞こえたのか?そして若者達がすぐ離ればなれになったにも関わらず、1階からすぐに逃げていったのか?謎が残された。

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