ジュリエットは暗黒魔法使いだったので、悲劇は爆散いたします

清涼 エーリッヒ

第1話 出会いは突然に

東の国の魔法学院ヴェローナ。

中立地帯の都市ヴェローナに位置するこの学院には、

世界各国の貴族や王族の子供たちに加え、

剣術や魔法の才能にあふれた若者が集まっていた。


魔法学院の北方に位置するフロストヴァルド王国の三男、

アッシュ・ノースフォードも入学の日を迎えていた。


「アッシュ様、あまり朝食が遅いと、式典に間に合いませんよ。」


ルーナが準備をして王子をせかす。


ルーナ・ノーヴァはアッシュ王子の付き人・護衛兼家庭教師である。

アッシュの学業面でのサポートの目的で選抜された、

フロストバルド随一の参謀であり、

錬金術師であり、王国随一の土精霊魔法使いである。


遠方のフロストバルドから、王の命を受け、

アッシュの為にはるばる派遣されている。


「よし準備ができたぞ、ルーナ、僕の方が先にでるよ!」


「王子、忘れ物はないですか!」


「今日は式典だけだからきっと何もいらないよ!」


王子は走って飛び出す。

ルーナは遅れて追っていく。


「アッシュ様、待たせておいて、置いていくのは、あんまりですよぉ。」


___王子の手紙_____


兄さん、今日が学院の初めの日です。

修行をしてもうだつのあがらない僕に、

外の世界で勉強させてくれる機会を準備してくれてありがとうございます。

これからどんな生活が始まるか、とてもわくわくします。

_____________


しばらく走ったあと、


アッシュは建物の角で見知らぬ人とぶつかってころんで、

しりもちをついてしまった。


アッシュは非常に驚く。

なぜなら、ぶつかった相手が、

この世のものとは思えないほど、


きれいだったから。


アッシュは、一瞬緊張で硬直し、


この一瞬の時間がとても長く感じられた。


___アッシュの手紙____

でも、兄さん、

こんなきれいな人がこの世界にいるなんて、

僕は想像していませんでした。

______________


「ぶ、ぶつかって申し訳ありません。お名前はなんといいますか。」


とアッシュは聞いた。


「リリア・サザンウィンドと申します。サンフィオーレ皇国から来ました。

あなたもみたところ同じ学園の生徒のようですね。」


「はい、私はアッシュ・ノースフォードです。フロストバルドから来ました。

前を見ずに走ってしまい、もうしわけありません。」


「いいのですよ。あなたに怪我がなくて、幸いでした。」


ここで追いかけてきたルーナが到着する。


ルーナは、王子がぶつかってしまった相手が、

サンフォーレの皇女殿下、

「リリア・サザンウィンド」であることを確認した。


これは、外交問題に発展しかねない「異常事態」である。

入学当初に発生した重大トラブルにルーナは戸惑いながら

どうこの場を収拾をつけるかを考えながら、

とりあえず挨拶をして時間を稼ぐことにする。


「こ、これは、失礼いたします。リリア皇女殿下、王子が失礼を申し訳ありません。アッシュ・ノースフォード、フロストヴァルドの王子の付き人、ルーナ・ノヴァと申します。」


「よいのです。私も暇をしていましたし。アッシュ様に怪我もなくて幸いでした。

私は式典にあまり興味もないので、調度よいですから、アッシュ様、

私と一緒に街を散策くださらない?猫にでもぶつかったと思って。」


と付き従えていた猫の獣人に目配せをする。


「こちらは、ノワール、わたしの付き人ですわ。

アッシュ様、私たちと、今日少しだけ、お供頂けますか?」


「は、はい、喜んでお供させて頂きます。」


と、ややぎこちなく王子は対応した。


アッシュ王子、付き人のルーナ、リリア皇女、獣人のノワールの一行は

入学の式典を完全にすっぽかして、

学園都市の街を散策することになった。


これが両王国を揺るがすことになる二人の出会いであった。


フロストヴァルドの王子、

アッシュ・ノースフォードはこの時、

14歳であった。

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