小説を読むことが好きです【ゆる~い読書録】
隣乃となり
吉本ばなな『キッチン』
言わずと知れたベストセラーですね。
唯一の肉親である祖母を亡くした女子大生のみかげが同じ大学に通う雄一という青年とその母親と同居して生活をともにしていく、というストーリーです。だったはず…。
今のところ私が読んできた小説の中で一番好きな作品!!
この本を読んだ時、本当に、本当にびっくりして…。
なんというか、私の『こういう事が言いてえんだよぉ!!!』っていうものが全部詰まっている感じ。たまげた。しかもそれが今から何十年も前に書かれた小説だというのも凄い…。でもあまり読んでいて古さを感じない作品でしたね。むしろ言葉遣いのレトロさとか、逆にお洒落に感じました。
大泣きする、っていう感じの感動ではなく、深く、深く心に刺さりました。読んでいる間ずっとどうしようもない幸福感に包まれてました。こういう経験って本当に限りなく少ないので、なんか、なんていうんだろう…。
読んでいる間何度も「こんなものを読んでしまっていいのだろうか」っていう気持ちになりました。それは決してネガティブなニュアンスではなく、なんていうか…あまりにも美しすぎて、優しすぎて、少し致死量に近いと思ってしまったんです。大袈裟な、と思われるかもしれませんが、本当にそうでした。
あまりにも美しすぎて、優しすぎて、儚すぎて、もはや幻だと思った。それくらい凄い作品です。
これは恋愛小説ではないと私は思います。いや、『愛』はあるでしょうか。でもそれは性欲が絡むようなものではなく、家族に向ける無償の愛、とでもいうのかな。それに近い気がします。
作中でもそれに関係するやり取りが出てきます。そこのシーン、大好きです。
あとはやはり『キッチン』というだけあって、食や食べ物に関する描写が沢山でてきます。
詳しいことは言いませんが、やっぱ食べ物ってすげー!って思いました。
なんか思い詰めてても美味しいもの食べるだけで一時的だとしても少し心が明るくなる。それってほんと凄いですよね。偉大。食べ物。
話は変わりますが、後半の雄一の危うさだったり儚さだったり、そういう部分がなんていうか……読んでいて辛かった。なんていうか、呼吸がしきれない感じ。ずっと浅いところで息を吸って吐いてる、そんな感覚になりました。もどかしいっていう言葉が一番合っているでしょうか。人の心を引き留めるのって難しいですね。特に相手が危うい状態なら。言葉が響かない感じ。相手は一見平静を装っているので追求しにくい。どこか違う次元、というか、自分じゃもう届かないところに相手がいて、それをこちらへ連れ戻すにはどうすればいいのかと焦ってしまう感じ。読んでいてそういうものを強く感じる作品でした。影響を受けて、私の過去作の『天使が死ぬには早すぎる』でもそういう描写を入れました。
『死ぬことと生きること』について書かれた小説にどうしても惹かれてしまいます。(中二病だからとかそういうことではないです。多分…。)割と日常的に生死についての思索をします。死んだ後の世界ってどうなっているんだろう、とかそういう誰もが一度は持つようなふとした疑問の延長ですが、結構考えます。
死を描いた小説を読むと生きていることの凄さとか尊さとかを強く感じますよね。あれ…なんだか月並みな言葉になってしまった…。
今生きている以上いつかは必ず死が訪れる、というのは当たり前のことですが、やはりまだ自分事には考えられませんね。だからこうやって小説を読むのかな。死なずに死に触れる、というのはこういうことでしかできないのかもしれません。
もちろん自分以外の人の死、というものはありますが…。
私がこんなにも死に惹きつけられるのは、幼い頃に一度大きすぎる身内の死に触れたからか、それとも単に中二病の気があるからか、思春期だからなのか、あるいは、もしかしたら私だけじゃなくてみんな結構そうなのかもしれない。
なんだか意味のわからないことを書き散らしてきましたが、『キッチン』は本当に素晴らしい小説なので読んだことのない方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか…!
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