第6話 駆け抜けていく


KUSANAGIEXPRESSは、まだ見ぬ目的地へ向かい、闇の中を力強く駆け抜けていた。列車の車輪がレールを叩くリズムが静かに夜の空気を揺らし、窓の外には、星々がきらめきながら流れていく。列車は一瞬たりとも止まることなく、まるでそのスピードが二人の運命を決定づけるかのように、真っ直ぐに未来へ向かって突き進んでいた。


静香は席に座ったまま、心地よい揺れに身を任せながら、目を閉じていた。彼女の隣には直人がいて、静香の手をそっと握りしめていた。二人の手は、まるでこれまでのすべての瞬間を共有してきたかのように、しっかりと結ばれていた。


この旅が始まってから、いくつもの夜を共に過ごし、いくつもの出来事を共に乗り越えてきた。直人との出会いから始まったこの旅は、彼女の人生にとって特別な意味を持つようになっていた。静香は心の中で、この旅が終わったとき、彼との関係がどうなるのかを考えながらも、その答えが見つからないまま、列車は夜の中を走り続けていた。


「静香さん…」直人が小さな声で彼女を呼んだ。


静香は目を開け、直人の方を見た。「どうしたの?」


直人は少し照れくさそうに微笑み、静香の手を軽く握り直した。「何でもない。ただ、静香さんとこうして一緒にいると、時間が止まってほしいと思うことがあるんだ。」


その言葉に、静香の胸は温かくなった。彼女もまた、同じ気持ちを抱いていた。「私も同じよ。直人さんと一緒にいると、すべてが特別な瞬間に感じられるの。」


二人はしばらくの間、何も言わずに互いの目を見つめ合っていた。静かに流れる時間の中で、言葉にならない思いが二人の間に漂っていた。列車の揺れが心地よいリズムを刻み、その音が二人の心をさらに近づけていた。


「このまま、ずっと走り続けていたい。」直人がぽつりと呟いた。


「そうね、私もそう思う。」静香は微笑んで答えた。「でも、この旅が終わったとき、何が待っているんだろう?」


直人は少し考え込んだ後、静かに答えた。「それは誰にも分からないことだけど、僕たちが一緒なら、どんな未来でも受け入れられると思う。」


静香はその言葉に深く頷いた。彼女にとって、直人との時間はかけがえのないものになっていた。この列車がどこへ向かっていようと、彼と一緒にいることができるなら、それだけで十分だった。


「夜が明けるまで、まだ少し時間があるね。」直人は窓の外を見ながら言った。


「そうね…でも、夜が明けるのが少し怖いわ。」静香は窓の外の闇を見つめながら答えた。「今は、この闇の中で二人きりでいることが、安心感を与えてくれるから。」


「でも、夜が明ければ、新しい一日が始まる。新しいチャンス、新しい希望…それが僕たちを待っているんだ。」直人は静香の肩に手を置き、優しく引き寄せた。「だから、怖がらなくても大丈夫。僕たちには、これからも一緒に駆け抜けていく未来があるんだ。」


静香は直人の言葉に勇気をもらい、彼の肩に頭を預けた。「ありがとう、直人さん。あなたがそばにいてくれるから、私もどんな未来でも恐れずに進んでいけるわ。」


列車の揺れはさらに穏やかになり、二人はその揺れに身を委ねながら、互いの存在を感じ続けていた。夜の闇はまだ深く、列車はその中をひたすらに走り続けていたが、静香の心の中には、直人と共に進んでいく未来への期待が膨らんでいた。


「この列車がどこへ向かっているのか、今はもう関係ないわね。」静香は目を閉じたまま、微笑みながら言った。「私たちが一緒にいる限り、どんな場所でも、それが私たちの目的地になるのだから。」


「その通りだよ、静香さん。」直人は優しく頷き、彼女の手を再びしっかりと握りしめた。「僕たちが進んでいく場所が、僕たちの未来なんだ。」


静かな夜の中で、二人はその言葉に深い共感を覚えながら、再び互いの存在を感じ続けていた。KUSANAGIEXPRESSは夜の中を駆け抜け、まだ見ぬ未来へと向かって進んでいた。



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