第16話 前世で武神と呼ばれた男、ギルドを作ろうとする
『寵愛の儀』を終えた翌日、本来なら村に帰る予定だったが俺がハッカとソリスに村に冒険者ギルドを作るという話をもちかけた。
今、俺達は馬車の寄合所で話している。
「村にギルドか……」
ハッカは思案顔だった。
「嫌か? 別にギルド員として登録するだけでいいよ。いつも通り狩りとかしてもらって」
「そんなこと言ってないだろ! 面白そうだ……だがよ……へロルフは依頼を出してくれるらしいが、それ以外の依頼って俺達が住む辺境の村に来ることがあるか?」
「でもヒュー君の強さが広まれば、依頼はくるかも」
「いくらヒューゴが強くても職業が『無職』なせいでスキルがないという偏見がある。それにやっぱり村の位置が悪すぎる。人が滅多にこないからな」
「まあまあ、とりあえず作ってみよう。物は試しだ。どうせ二人共暇だろ」
二人に発破をかけてみた。
「そうですね、確かに暇ね」
「人に向かって暇とか言うな」
なんだかんだ二人はギルド設立に乗り気だ。
それから、俺達は馬車で村ではなく領主がいる街に向かった。
俺は領主の事どころか周辺にいる貴族のことを全く知らなかったのでソリスに詳しく説明してもらうことにした。ソリスはおっとりしているが知識人だ。
「ちなみにヒュー君は村がラゴール辺境伯と呼ばれるお方が領主をしている地域に属していると知っていますか?」
「いやラゴールという名は始めて聞いた」
「じゃあ、何なら知ってんだ」
ハッカの問いに俺は顎に手を当てて考え、思いついたように喋る。
「俺達の住む村の名前はソガの村ということは知っている。合ってるだろ?」
「ええ、正解ですっ」
「ソリスあんまりこいつを甘やかすな。ってかなんにも知らないってことじゃんか」
「まっ……そういうことだな」
やれやれといった感じで腕を広げるとハッカは「なんだこいつ」と言っていた。
「じゃあ色々説明するから聞いてね」
「おう頼む」
静かにソリスの話を聞くことにした。
話を要約すると、俺がいる村はラゴール辺境伯が治めるラゴール地方に位置するらしい。そして、ラゴール辺境伯がいるラゴールの街は『寵愛の儀』を受けた町から近く、速めの馬車なら一日で着くらしい。
また、ソリスからルゴ家について教えてもらった。ルゴ家はへロルフとヒルダの家だ。ルゴ家はラゴール領の近隣にある土地を領地としている貴族だ。
今回の『寵愛の儀』にはラゴール辺境伯の息子と娘もいるらしく、祝いを兼ねて『寵愛の儀』を受ける子供がいる貴族を集めてパーティをしていたらしい。そして、へロルフとヒルダはその帰りに『寵愛の儀』を受けたとのことだ。
何故、へロルフとヒルダはラゴールの街で『寵愛の儀』を受けなかったんだとソリスに聞いたら、貴族は体裁が大事なので子供が授かる職業の優劣で貴族同士のマウントの取り合いが始まるらしい。そのため、どの貴族もマウントの取り合いを避けるためにパーティが終わり次第、それぞれ違う町で『寵愛の儀』を受けたらしい。
「色々大変だな。貴族じゃなくて良かった~」
「オレ達の親世代は没落貴族だけどな」
「確かに」
兎にも角にも俺達はラゴールの街へと向かう馬車に乗り始めたが、
「待ってください……ギルド員は全員で五人必要なんですよね。後、二人足りませんが、どうするの?」
ソリスは不安そうな面持ちで尋ねていた。
「村の人を適当に入れようと思う!」
「いい迷惑過ぎるぞ……」
ハッカは俺の提案に困惑していた。
領主の街ともなると大きいはずだ。もしかしたら強者に会えるのかもしれない。楽しみだ。
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