第4話 前世が武神と呼ばれた男、彼の幼馴染達が凄い職業を得た
今、司祭の前でハッカが膝まづいて『寵愛の儀』を受けようとしていた。
職業やスキルに頼らなくても自身の強さには自信があるので、自分の職業が戦闘系だろうと生産系だろうとどうでもいいが幼馴染がどんな職業を与えられるのかは気になるな。いわゆる野次馬根性というやつだ。
「ヒューゴ! オマエ近くにいすぎだろ!」
俺はハッカの背後に立っていた。司祭は俺を見て困惑していた。
「なんの職業になるのかなと思って近くで見ておこうと思った」
「周りを見ろって、皆、遠巻きで『寵愛の儀』を見守っているじゃんかよ」
「方向音痴のハッカに言われたくない」
「今、方向音痴関係ないだろ」
ハッカと適当に話していると司祭が「あの……」と言って戸惑いながら声をかけてくる。
「司祭さん、『寵愛の儀』は近くに寄ってはいけないルールがあるのでしょうか」
「ないですが……」
「なら、よし」
俺が独りでに頷くとハッカに「何がよしなんだ」と言われたが気にしないでおこう。そのあと、司祭は咳払いをして儀式を開始する言葉を口にした。
すると、ハッカの体は光の柱に包まれ、柱の壁に文字が浮かんでくる。
職業:『
スキル:【雷魔法】【風魔法】【雷耐性】【雷吸収】【剣術】【槍術】【物理攻撃力上昇】【物理攻撃無効】【俊敏特大上昇】
なるほどこんな感じで出るのか。というか雷帝ってなんだ。
俺が不思議に思っていると司祭が体を強張らせたあと、堰を切ったように喋り出す。
「ら、ら、ら、雷帝じゃとおおおおおおおお! 歴史上一人しかいなかった雷を使う最強の戦士の職業じゃああああああ。先代の『雷帝』はその身一つで国を建国し、彼が存命中は戦争が不敗だったと聞いた!」
なんか気になってたこと全部説明してくれたぞ。
司祭の言葉で周りにいる若者達がざわめき始めた。
「俺があの『雷帝』だってよ!」
ハッカは嬉しそうに俺に詰め寄ってきた。
「オースゴイスゴイ」
とりあえず拍手してやった。
「絶対、凄いと思ってないだろ! で、次はソリスの番だろ。どこにいる」
俺は肩越しに親指でソリスのいる方向を無言で差した。
「すぴ~」
「なんで教会で寝ちゃってんだよ!」
ソリスは床に横たわって寝ていた。周りの若者は彼女を見て冷や汗を掻いていた。
「いや、ソリスが眠たいって言ってたから、寝ていいよって言った」
「オマエの家じゃないだろここ」
「そんなこと分かってる!」
「なんでキレてんだよ」
俺はやれやれと肩を竦めてソリスを起こしにいった。
ソリスは寝ぼけていたのか何故か俺の前で膝まづいたが、ハッカの誘導によりなんとか司祭の前で膝まづかせることに成功した。
「さ、さて、では始めるぞ」
「お願いしますわ」
ソリスが胸の前で腕を組むと、先程と同じように光の柱が出現し文字が浮かび上がる。
職業:『
スキル:【錬金術】【ポーション調合】【毒耐性】【毒吸収】【爆発耐性】【爆発吸収】【魔法防御力特大上昇】【魔力感知】【生命感知】【超再生】
こっちもなんだが凄そうだ。
「れ、れ、錬金姫じゃとおおおおおおおおおおおお! 歴史上一人しかいなかった伝説の女錬金術師と同じ職業じゃああああ! 彼女が作った薬品はありとあらゆる奇跡を起こし、世界中の国が宮廷に仕えるように誘ったが仕官を断ったと聞いた!」
また気になってたこと全部説明してくれたぞ。
司祭の言葉で周りにいる若者達が、またざわめき始めた。
「錬金姫ですって」
「良かったな。ソリスの父親は村一番の薬師だし、母親は確か魔法使いだったよな。色んな知識の造形が深いソリスにぴったりだ」
「だよね~」
ソリスは嬉しそうにニマニマと笑っていた。満更でもないようだ。
「オレのときとなんか反応違うじゃんかよ」
ハッカは不満そうだった。
「だって、錬金姫ってなんとなく錬金術を使う人って分かるけど雷帝はよく分からん」
「先代の雷帝に謝れ」
そんなこんなで俺はいよいよ『寵愛の儀』を受けることになった。
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