第20話 未来への光

エリオットとアイリスがリオネルの遺した光に包まれてからどれほどの時間が経ったのか、二人には全く分からなかった。広間を満たしていた眩い光が徐々に収まり、二人の視界が再び明瞭になった時、彼らが立っていた場所は、先ほどの地下の広間とはまるで別世界のようだった。


そこは、かつてリオネルが影と戦った場所ではなく、光に満ちた穏やかな風景が広がっていた。草木が生い茂り、花が咲き誇る美しい草原が一面に広がり、その上を心地よい風が吹き抜けていた。空は澄み渡り、太陽が柔らかな光を注ぎ、鳥たちが楽しげにさえずっていた。


「ここは……どこなんだ?」


エリオットは目を見開き、周囲を見渡しながら呟いた。彼がかつて知っていた場所とは全く異なる風景が、彼の目の前に広がっていた。アイリスもまた、驚きと戸惑いを隠せず、その場に立ち尽くしていた。


「リオネル様が私たちに見せようとしたのは、この場所なのかしら……?」


アイリスが呟き、手のひらで草の感触を確かめるようにそっと触れた。その感覚は、確かに現実のものであり、夢や幻とは思えなかった。


二人がその場に佇んでいると、遠くから誰かが歩いてくる気配がした。エリオットとアイリスは顔を見合わせ、慎重にその方向に目を向けた。そこには、一人の女性が穏やかな笑顔でこちらに向かって歩いてくる姿があった。


その女性は、どこか懐かしい雰囲気を漂わせていた。彼女の髪は風になびき、その瞳には優しさと温かさが宿っていた。エリオットは、その姿を見た瞬間に何かを感じ取った。


「あなたは……」


エリオットが問いかける前に、女性は静かに微笑んで答えた。


「私は、リオネル様の意思を受け継ぐ者……そして、この王国の未来を見守る者です。」


彼女の言葉は、まるで風に乗って二人の心に染み込んでいくかのようだった。アイリスはその言葉を聞き、何か深いところで共鳴するものを感じた。


「リオネル様が私たちに見せたかったのは、この未来だったのですね……」


アイリスの問いに、女性は静かに頷いた。


「そうです。あなたたちが影を封じ、この王国を守り抜いたことで、リオネル様の望んだ未来が現実となったのです。この場所は、あなたたちが作り出した新たな世界……影の力が完全に消え去り、平和が訪れる未来です。」


エリオットはその言葉に、胸が熱くなるのを感じた。彼とアイリスが命を賭して戦い抜いた結果、この美しい未来が築かれたのだという実感が、彼の心に深く刻まれた。


「私たちが……この未来を……」


エリオットは言葉を詰まらせながら呟いた。彼が望んでいたのは、まさにこのような未来だった。リオネルが命を賭して守ろうとした王国、その未来が今、彼の目の前に広がっていたのだ。


「あなたたちは、リオネル様の意思を継いで、この王国を守り抜きました。そして、この世界にはもう影は存在しません。これからは、あなたたち自身がこの王国の未来を築いていくのです。」


女性の言葉に、エリオットとアイリスは深く頷いた。彼らは、リオネルの遺志を遂行するだけでなく、新たな未来を切り開くための道を選び取ったのだ。


「でも、この未来は……本当に私たちが守り続けていけるのでしょうか?」


アイリスが不安げに問いかけた。その目には、これからの未来に対する期待と同時に、責任の重さを感じていた。


女性は優しく微笑みながら答えた。


「もちろんです。あなたたちが選んだ道が、この王国の未来を照らす光となるのです。リオネル様も、きっとそのことを信じていたはずです。そして、あなたたちにはその力があると。」


エリオットとアイリスは、その言葉を胸に深く刻み、新たな未来を迎える覚悟を新たにした。彼らが命を賭して戦い抜いた影の戦いは終わり、これからは平和と繁栄が訪れる未来を築いていくことが彼らの使命となったのだ。


「これからは、私たち自身がこの未来を守り、導いていく時が来たのですね……」


エリオットが静かに言った。その言葉には、これからの未来に対する希望と決意が込められていた。


「そうです。これからは、あなたたちが王国を導く光となるのです。」


女性はその言葉を残し、再び微笑んで姿を消した。エリオットとアイリスは、その場に立ち尽くしながら、彼女が遺した言葉を心に刻んだ。


二人はゆっくりと草原を歩き始めた。彼らの前には、新たな道が広がっていた。王国を守り抜いた彼らが、今度は新たな未来を築いていくために歩むべき道が、目の前に続いていた。


「これが、私たちの選んだ未来……」


アイリスが呟き、エリオットは静かに頷いた。彼らは共に、リオネルが遺した光を胸に抱き、新たな世界を歩み始めた。

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