第5話 ウォーターメロン



 森の中

蝉を取りに行った


 蝶を追いかけて

いつまでも走っていた


 田んぼに入って

カブトエビを持って帰った


 小川へ行って

身体が充分に冷えるまで浸かっていた


 その後は河原で日光浴


 疲れ果てて家に帰れば新聞紙を広げて

種を飛ばしながら冷たいスイカを食べては

シャツを赤く染めて母に叱られた暑かった真昼


 あの夏の日々


 夜になれば空き地の隅で

花火に付き合ってくれた近所のお姉さん

一度も怒ったことのない優しかった人


 街灯の届かない路地裏で

三日月が笑っていた夏の日の夜に


 冷房の効いた窓の中から外を眺める

灰色の街の暑い夜に思い出す懐かしい眺め


 幼い夏の遠い日々

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