第52話 潜入王城!!
書庫を出て耳を澄ますと、見回りの兵士達らしき足音と鎧の擦れる音がそこらかしこでひびいている。
「さすがに緊張するね……とりあえず兵士を見つけたら鎧を奪おう」
「はい……でも、どうやるんですか? 師匠……無理してませんよね」
「あー、大丈夫だよ。なんとかなるって。二人のおかげでカインとの戦いでは休めたしね」
わらってごまかすとティアが何かいいたげに見つめてくる。本来の予定では、俺が魔眼を使って身体能力を上げて、兵士から鎧を奪って変装する要諦だったのだが、グラシャラボラスとの戦いでのダメージが完全に抜けていないのだ。
「師匠、こういうときは弟子をたよってください。私の得意分野ですから」
「ちょっ……ティア」
俺が止める間もなく、足音を忍ばせてティアが兵士たちの方へと向かっていく。
「申し訳ありません。ちょっとお聞きしたいことがあるのですが……」
「ん? なんだお前は……? 可愛いな」
「冒険者か……? だがなんで城内に……、しかもちょっと服が汚いぞ。でも、可愛いな」
皮鎧に短剣という典型的な冒険者スタイルの少女がいることにけげんな顔をする兵士達。
そんな兵士たちにティアは恥ずかしそうに顔を赤らめてもじもじとしながらいった。
「そのですね……ヨーゼフ様に夜の街で会った時にこの冒険者みたいな格好で、遊びに来てくれと言われたんですが、ちょっと迷ってしまいまして……」
「え、あの人そんな性癖があるのか……」
「貴族だから下々の服装をした女をたまには抱きたいっていうわけか……ちょっとやべえな……」
可愛らしいティアにデレっとした兵士たちが思わず本音を漏らす。ヨーゼフに対する兵士の好感度が下がった。とかゲームなら出そうである。
いい気味である。
「今の時間は執務室にいるはずだ。よかったら俺が案内を……」
「いや、待て……こいつおかしいぞ。なんで俺たちはこんな真昼間に城にいる娼婦を違和感なく受け入れているんだ?」
兵士Aがデレデレしながら案内しようとするも、兵士Bがはっとした様子で気づく。彼の胸にはロザリオがあるのが見えた。仲の良い神官でもいるのかもしれない。けど……
「さすがは城の兵士さんですね。でも、もう遅いです」
状況が読めないでいた兵士Aをティアが胸元から出した香水を振りまくと昏倒し、俺が背後から忍びよって声を上げようとした兵士Bを気絶させる。
「すいません、師匠の手を煩わしてしまいましたね……」
「いや、精鋭のはずの兵士をよくやってくれた。おかげで魔眼を使わないですんだよ。しかもヨーゼフの居場所まで聞いてくれたしね」
「えへへ、ありがとうございます♡」
そんなことを言いながら兵士たちを書庫の隅っこに運び鎧を剥いで装備する。そして、俺たちはヨーゼフの待つ執務室へと向かうのだった。
城内は近くに魔族がいるということで多少あわただしく、ヨーゼフに報告があるというとあっさりと通してもらえた。
おそらくはティアの魅了のおかげで俺たちの言うことを無意識に信じやすくなっているのだろう。
本当に将来がこわい女の子である。そして、俺たちはついにヨーゼフがいるであろう執務室への前に来た。
「「……」」
お互い目をあわせて、そのまま扉を開くと、そこには憎らしくも懐かしい顔が見えた。
「一体何の用だ? ノックくらい……」
「何言っているんだ。魔族にノックの文化はないだろ?」
魔眼でヨーゼフを見つめると人ではない量の魔力を探知した俺はそのまま、身体能力をあげて斬りかかる。
殺さない程度にいためつけても罰は当たらないだろう……そう思ったのだが……
「はっはっは、その目はファントムじゃないか。やはり貴様がソロモンに力を貸していたのだな。追放しただけだというのに復讐しにくるとは器の小さい男だ」
「違う!! 俺はソロモンの生き方に共感したんだよ!! それに人に化けているお前のたくらみを阻止するためにきたんだ!!」
俺の一撃はあっさりとヨーゼフの鋭い爪のある手に止められてしまう。ソロモン曰く戦闘力はないんじゃなかったのか?
「私が何の準備もしてこなかったと思ったのか? 実に愚かだな」
「師匠……あれは……」
「ああ、あの眼は魔眼だ」
その目には俺と同じ魔眼が輝いていたのだった。
★★★
潜入任務の魅了は優秀ですね
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