爪紅(つまくれない)に花の咲く

歌川ピロシキ

つまくれない

 最近、ジェルネイルをするようになった。

 いつも化粧は最小限。昭和一桁生まれの母からは「マニキュアやペディキュアをするのははしたない」と、私の世代でも既に時代遅れすぎる思い込みを刷り込まれて育った私はアラフィフになるまで結婚式の時くらいしかネイルなるものをしたことがない。


 それが、何をとち狂って急にジェルネイルなどという小洒落たものに手を出すようになったのかと言えば、やはり思春期にさしかかった娘のセンスに合わせてのこと……などと言うわけもなく。


 単に「爪が割れたりささくれて痛くなるのを防ぎたいから」。


 きっかけは、図書ボランティアで小学校に行った時のこと。

 二枚爪の上側が剥がれそうになっているのが本のページに引っかかって、地味に痛いので絆創膏を貼った。

 それを見たボランティア仲間が「ネイルシールを貼れば爪が剥がれにくくなるし、上からトップコートを塗れば爪が周囲に引っかからない」と教えてくれたのだ。


 貼ってみると、爪にぴったりフィットするのでなかなかに具合が良い。

 爪専用に作られている分、むしろ絆創膏よりも快適かもしれない。


 そんなこんなで、今ではほぼ毎日欠かさずネイルシールを貼り、ジェルネイルのトップコートで保護している。一度貼ってしまえばほぼ一週間そのままで良いのもありがたい。


 不思議なことに、ネイルをするようになってから若い「ママ友」の態度が変わった。

 以前は一回り年上の私をあからさまに嘲るような態度が見え隠れしていた人が、いちいち年齢を当てこするような発言をしなくなった。

 他には服装も化粧も一切変えていないことを考えると、ファッションというものは些細に見えるものが何らかの記号として機能するのだな、と興味深い。


 もっとも、私自身は周囲のそうした態度は「ネタ」として興味深くはあるものの、だからと言ってそれ以上に彼らに何らかの訴求をするつもりはなく。

 今週も自分の気分で適当なシールを近所の百均で買っては絆創膏がわりにぺたりと貼るのだろう。


 ものぐさ万歳(笑)

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