第16話現代ファンタジー「魔法の本を手に入れた女性のダイアリー」

 ※フィクションです。




 8月〇日

 今日も、うだるような暑さだった。今日は近くの図書館に出かけたの。

 いつもの図書館なのに今日は、心なしか、わくわくするような?

 気のせいよね。私が本棚の本を眺めて、本を探していると一冊の赤い表紙の本が目に留まった。


 本は、山ほどあるのになぜか、その本に呼ばれているような気がして……

 その赤い表紙の本を借りてしまった。その本のタイトルは、なになに“元気になる本?”



 8月△日

 その本は、一ページ読むごとに女の子が、元気になって行くと言う内容だった。

 その本を読み始めてから、私の体が変わって行った。


 病気がちですぐ、疲れる体質なのに。あの日から、一時間、二時間位、書き物をしても疲れなくなった。

 あれから、五日目。本は、私が元気を取り戻して行くたびに黒く染まって来た。



 8月□日

 あれから、十日目。本の中の女の子が元気になって行くと同時に私も、同じように健康を取り戻して行く。もう、半分以上も本が黒くなってしまったのに、白く文字が浮かび上がって文字だけは読めるんだ。



 8月▽日

 読み始めてから、二十日目。本は、真っ黒の状態になってしまったけれど。

 私の体は、すっかり元気になっていたの。

 家族や友人たちも「奇跡だ」と驚いていたわ。



 8月◇日

 私が塾から帰ってくると、本がバラバラなっていて……

 私は、感謝を込めて庭に穴を掘ってお墓を作った。

 

 図書館の人には、申し訳ないけど。素直に謝って許してもらおう。

 こんな不思議なことなんて、話しても、信じてくれないものね。



 翌日、図書館に謝りに行くと、図書館の担当の人は、不思議な表情をして「そんな本は置いていない」と言う。

 

 そっか。あの本は、私だけがえるものだったのね。

 私は新しい本を借りると、図書館を後にした。


 

 風に乗って、お父さんの声が聴こえたような気がした。

「良かったな」って。あの本は、天国にいるお父さんがくれたのかしら?

 ありがとうね。お父さんのことも、本のことも一生忘れないよ。



 -終わり-

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