第7話

 この家は、父親の死亡保険金で新築したと、母は言った。


 父は、七年前の一月に失踪した。

 私が七歳、タツヤが三歳の時だ。

 釣り好きだった父は、月に二回ほど一人で夜釣りに出掛けた。その夜も「大漁を期待して待っていてね」と、私の頭をポンポンして、笑顔で出掛けて行ったのを覚えている。

 ところが、翌朝になっても、父は戻らなかった。母が捜しに行くと、父がよく行く岸壁には、釣り道具と車が残されていた。状況から、海に落ちたのではないかと、警察が捜索したが、所持品一つも見付けられなかった。悪いことに、深夜でひと気も無く、目撃者もいないのだという。


 今年の一月、母が父の失踪届を出してから七年が経ち、死亡推定がされた。法的に父は死亡したので、簡易な葬式を済ませた。

 死亡保険金が下りて、母は家を新築し、今月、私達は賃貸アパートから引っ越してきたのだ。

「近くに墓地がある所為で、割安の土地だったから買えたのよ」

 霊の通り道であることを、母は初めから知っていたらしい。

「事故物件の賃料が安くなるのと同じよ。気にしなければ、お得に住めるということ」

 あっけらかんと言うが、私とタツヤは、正直怖い。母の血を引く私達は見えてしまう。だから怖いけれど、霊感の強い母がいるから、多分、大丈夫。何かの時には、対抗できると信じているのだ。

 

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