第20話
「ただでさえ納期が遅れているんですよ。現場に戻って下さい」
きよちゃんが助けに来てくれた。
それでも動こうとしないおばちゃんたちに、
「黒田さんに怒られても知りませんよ」
勤続30年目のパートさんの名前を出した。
幾つかあるおばちゃん達の派閥をうまい具合にまとめているすごい人だ。
社長も一目置いている。
その時、ごほんとわざとらしく咳払いする声が後ろから聞こえてきて。
蜘蛛の子を散らす様にあっという間におばちゃん達が一瞬でいなくなった。
「四季くんに構っている暇なんてないのに」
「黒田さん、ありがとうございます」
ぺこっと頭を下げた。
「いいのよ別に。段ボールを取りに来ただから」
何事もなかったように倉庫へと向かった。
「あのね、きよちゃん」
「ん?」
「やっぱりなんでもない」
首を横に振った。
「え?なに、なに、気になるでしょう」
「えっとね。あのね…………」
言いにくかったけど、きよちゃんやたもくんには隠し事はしたくなかったから、正直に言うことにした。
「今度の土曜日、和真さんに海に連れていってもらうことになった」
一瞬きよちゃんの動きがピタリと止まった。
「どうしても断ることが出来なかった。だってね、和真さんすごく嬉しそうだったから。悲しい顔をさせたくなかった」
「あのね四季…………」
きよちゃんが呆れるのも無理ない。
和真さんは自分より大人の男の人。
しかも生まれた場所も育ちも、いまの立場も身分も何もかもが違う人だもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます