第14話

彼からプレゼントされた人生初のスマホ。

きよちゃんやたもくんに一通り操作方法を教えてもらったけど、いまいちよく分からない。

画面と睨めっこしていたら、頭上からくすくすと笑う声が聞こえてきた。


「どう慣れた?」


顔を上げるときよちゃんと目が合った。

ううん、首を横に振ると、


「そっか。若いんだしすぐに慣れるよ。ねぇ四季、悪いんだけどこれを大至急社長に届けてほしいの」


きよちゃんに分厚い茶封筒を渡された。


「あの、これは?」


「今日の打合せの資料。社長ね、時間を勘違いしていて、オークポリマーの三上さんから電話が来て慌てて出掛けたのよ。生憎みんな手が離せなくて。四季に社長の忘れ物を届けてほしいの」


「でも僕、行ったことないし」


「タクシーを呼んであるから大丈夫」


もしかしたら彼に会えるかも知れない。

淡い期待に胸が踊った。


昨日の夜、何度か彼に電話を掛けようとしたけど緊張し過ぎて、なかなか通話ボタンを押せずにいたら、彼の方から電話が掛かってきた。

どこを押したら通話になるのか一瞬頭の中が真っ白になってしまい、間違って二回も着信拒否のボタンを押してしまった。

三度目の正直でようやく彼と話しをすることが出来たけど、緊張していて何を話したのか全然覚えていない。


「朝宮さんに会えるといいね」


「き、きよちゃん‼」


悪戯っぽい笑みを浮かべ、


「会いたいって顔にそう書いてあるもの」


からかわれるように言われてしまった。

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