第16話

レベラの不安は当たっていた。


砦は魔物の襲来を受けて応戦したが、救援を連絡することもできず全滅したようだった。


砦のてっぺんで空が見える通路では、あちこちの壁などに血液やら何やらが付着していたが、人がやられている場所は、来た敵に対し防御ができなかった場所であり、敵を倒していない以上、同じ敵が来たら同じようにやられる可能性があるため、対策をたてるまで、しばらく立ち入り禁止区域とした。


あまりじっくり見ると精神的に参るためでもある。


砦の遺体を葬り、簡単に祈りを捧げたのち、禁止区域から離れた屋内で使えそうな場所で兵たちを休ませた。


元々ここには少人数しかいなかったこともあり、残念ながら屋内でも生存者はいないようだった。


幸いなことに飲食物や馬の飼料などは残されていた。


また、砦の内部に井戸がある作りとなっていたため、水の補充も可能であった。


兵士の一人が遺体を片付けるとき、襲われた際の誰かの手記を見つけたらしく、レベラの元に持ってきた。


レベラはギズモンドと共にそれを見たが、そこにはこう記されていた。


何処カラカ 鳥ノヨウナ


巨大ナル魔物 襲来セリ


動キ素早ク 


見張リ気付キシ時


スデニ砦上空ニ 


多数飛来セリ


弓隊 数少ナキシモ戦ウガ


魔物ノ翼 大キク 


ウチ羽バタキ


矢 翼ニ当タルモノ 少ナシ


投石機ニテ 壁上ヨリ狙ウモ


砦ノ上ノ 魔物ニ届カズ


飛来ヲ 止メル術ナシ


鳥ノ鉤爪ニ 砦ノ者 掴マレ


引キ裂カレ 食ワレル者


被害者 多数ニ 及ブ


伝令ニ 赴コウトモ


鳥ノ魔物 馬 ヨリ速ク


伝令モ 馬モ 無事ニアラズ


伝書鳥戻ラズ 


魔物ニ喰ワレタト思ワルル


我ガ砦 敵ノ襲来ヲ


連絡スル術ナシ


時ヲ立タズシテ 


全滅ニ直面セリ


眼前ニ鳥魔物襲来


最後の1文は乱れて書かれていたため、判読がようやくできる状態であった。


ギズモンドとレベラはしばしそれを見て立ちすくんでいた。


部下が砦の裏側に対魔物のため火矢を仕掛けようとものを燃やした跡があり匂いの原因ですと報告していたが、そのまま二人とも立ったままでいた。

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