第22話 レイちゃんの身体能力 3
「宇宙まで飛べるって……どういうこと?」
アニカが震える声でセツに聞いた。
理解できずに戸惑っているようだ。
そりゃそうだろう。
ここは中世ヨーロッパ風の異世界なんだ。
宇宙の概念なんて、ないもんな。
『アニカさま。レイさまは星まで飛ぶことができるのです』
「あ、星か。それは物凄く高くまで飛べるね」
簡単に理解した。
さすがアニカ。
魔法塔の住人でオレの幼馴染で想い人だけのことはある。
レイが変形してできた宇宙船は、四角の上に小さな四角を重ねて小さな羽を両側につけたような形をしていて、ちょっとぬいぐるみっぽい。
サイズは、子どもが遊園地でお金入れて乗って遊ぶ車のおもちゃよりも一回り大きいくらい。
広くはないが大人が乗れないサイズでもない。
もっともレイは大きくなれるから、この宇宙船も大きくなろうと思えばできるんだろう。
それよりレイが宇宙船に変形できるってことは、やっぱり魔族は宇宙から来るんじゃないのか?
でもって最終決戦が宇宙で行われるんじゃないか?
ドキドキわくわくの展開が待っているのか?
そういうことなのか?
「レイちゃん、たかく、とべる」
機首の部分がブンブンと上下に揺れる。
そこが顔なのかぁ。
てっきり、操縦席の上あたりになると思ってたよ。
「ヒト、のれる。ルド、のれ」
突然の命令口調に、今度はオレが戸惑う。
乗れないことは、なさそうだけど。
乗り口はどこ?
『あー……乗り口がないと、人がレイさまに乗るのは難しいかと』
「なぜ? せなかでいいよね?」
無理――――っ!
死ぬよ?
人間を背中に乗せて星まで飛ばれたら、死んじゃうよ?
ちょっ、そこに見える操縦席って見せかけなの?
『レイさま。そのまま宇宙空間にでると人間は死にます』
ちょっとセツさん。淡々と言ってるけど、それ割と残酷な事実。
「そっかぁ。そのままのせて、たかぁ~くまでとぶのは、わるいひとをのっけたとき、だけにするぅ~」
それもどうかなぁ、とお兄さんは思うよ?
良い人でも、悪い人でも、人間は背中に乗っけて宇宙空間へ行ったらダメだよ。
だが、魔族。
てめぇらは別だ。
レイの背中に乗せられて宇宙空間に放り出されるがいい。
魔族が宇宙空間で死ぬかどうかも分からないしな。ハッハッハッ。
「その状態で飛ぶと、どんな感じになるの?」
「ん、こんなかんじ」
アニカに聞かれて、レイの宇宙船がふわりと浮かんだ。
縦にスッと浮く感じだ。
「で、こうなる」
バビュンといきなり勢いをつけたレイの宇宙船は、渦巻くように天井目指して飛んでいく。
子どもはすばしっこいなぁ。
などと呑気な気分に眺めてしまうオレ。
だいぶ感覚がバグッてきているようだ。
「あー、空を飛ぶなら外のほうがよくない?」
アニカの言葉に、それもそうだな、とオレは思った。
でも外に出てコレが飛んでるの見たら、事情を知らない町の人たちが驚くんじゃない?
『高さならいくらいでも作れますぞぉ~』
とか家が言ってるが、そうゆうことじゃない。
どこまで飛べるのか、宇宙までホントに行けるのか、そっちのほうが気になるんだよねぇ。
「魔法塔で聞いたんだけど、実験するときに騎士団の練習場を借りるときがあるんだって。広い場所を借りられるそうだから、そこを借りたらいいんじゃないかな?」
アニカは本当に気が利くねぇ。
そんな場所があるなら借りよう。ぜひ借りよう。
「少なくともこの屋敷の周囲を飛び回るよりは他人の目につかないと思うよ」
おっしゃる通りです。
オレたちは魔法慣れしているから気にならないが、街中に住んでる人たちはそうでないことも多い。
生活魔法程度しか知らない人たちの前にロボット生命体が現れて、さらに宇宙船へと変形して飛び回ってたら流石にビビられるよ。
ここは安心して実力を見せてもらえる騎士団の練習場を借りよう。そうしよう。
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