第17話 神託公開の儀
ロボット生命体のレイちゃん五歳のことは、家とAIセツ、そしてアニカとタミーさんがワチャワチャとしてくれているから心配はない。
オレ無力。
ロボット生命体とのダブル勇者体制なのに何もすることがないというのも問題だ。
そもそも、コレ何の目的で召喚させたの神さま。
などと思っていたら神殿から呼び出しがかかったので行くことにした。
神託の中身を色々と説明してくれるらしい。
レイはアニカたちと何か盛り上がっちゃって行きたくないというので、仕方ないからオレひとりで神殿へと向かう。
神殿入り口までは転移魔法陣で行けるが、その先は歩かないといけないから地味に面倒くさい。
今日は神官や聖女くらいしかいないからジロジロ見られずに済んで助かった。
だが、いつも変わらず「ルドガーさま、いつもより憂いがあって素敵」「ロボット生命体という名の小さな勇者も自宅でお世話するなんて、面倒見がよすぎて二度惚れする」「魔力量が多くて優秀な魔法使いで勇者さまで小さい子に優しいとか神すぎる」(すべて意訳)などとコソコソされているのが心に負担だ。
オレはただのコミュ障なんだって!
とちょっとイラッとする。
でも神託の内容が気になるから聖女クリスティンのもとへ急ぎます。
この体、足が長くて便利だよなぁ。
サクサク進めるわ。
前世の足の1.5倍くらい長いんじゃないか?
筋肉もあるから歩くの早いわー。
筋トレしてるわけでもないのに細マッチョなの便利だし、自分の体だけど地味にムカつくわー。
などと埒もないことを考えて気を紛らわせつつ目的の場所へと向かった。
ただ案内人が一緒の時にはサクサク進めなくなるの辛い。
道に迷わなくていいし、案内の者がつく頃には他者の目につかない場所へと辿り着いてるからいいけど、マイペースに歩けないの地味に辛い。
などと思っている間に聖女たちの待つ部屋に辿り着いた。
「いらっしゃいませ、ルドガーさま」
クリスティンさまの笑顔は聖女らしい美しく厳かなものなんだけど。
ちょっと胡散臭い感じもするんだよね。
「ルドガーさま、レイさまはつつがなくお過ごしですか?」
アズロさまの笑顔は神官らしく胡散臭い。
この辺、微妙なんだよな。
男女差か?
勧められるまま応接用の椅子に腰を下ろし、出されたお茶を一口いただく。
神殿で出されるお茶は紅茶というより緑茶に近い。
高級そうな味はするが色は薄いから水そのものが良いんだろうな。
聖水か、それに近いもので淹れてるんだろうか、などと思っているうちにアズロさまがサクッと本題に入った。
「神託の内容は、だいたいこんな感じです」
一枚の紙を渡される。
「詳細は書けませんので、ルドガーさまに必要な部分だけをまとめてあります」
ありがとうございます、クリスティンさま。
神殿に下る神託には守秘義務などもあり、全部は公開されない。
それは心得ているが、全部秘密にされたらオレは動きようがない。
詳細に知りたいとも思わないので、必要な所だけまとめてもらうの助かります。
「あー……空から襲来する魔族に備え、勇者を鍛えよ、勇者よ?」
わかるような、わからないような。
これは神殿の要約能力不足ってことですかね?
などと思いながら読んでいた紙から顔を上げると、聖女と神官が驚愕の表情を浮かべながら目をキラキラさせている。
「ルドガーさまが、喋った……」
いや、そんなアズロさま。
オレだって声帯とか付いてるんで喋りますよ?
「やだ、ルドガーさま。声までハンサム……」
いやいや、クリスティンさま。
アナタまでオレにラブラブ光線付きの視線を送ってどうしようっていうんですか?
百歩譲って聖女さまからの熱視線には耐えますが。
アズロさま、アナタからの熱視線は絶対拒否です。
「空からか……」
羽の生えた魔族が空から来るのか?
いや、魔族なら羽生えたのだっているだろうから、わざわざ空って要る?
この空って、宇宙って意味か?
なんといってもレイちゃん五歳はロボット生命体だからな。
前世の知識から察するに、宇宙から襲来する魔族、大いにあり得る。
「勇者を鍛えよ、か……」
鍛えるべき勇者は、レイちゃん五歳のことだろう。
ロボット生命体だから、もともと能力は高いだろうけど。
いかんせん幼いからな。
で、この鍛える係の勇者が、オレか?
そういうことなら、レイのトレーニングについて考えないとね。
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