君の匂いは特別だ。

後藤先輩に助言を頂き僕は次の日の昼休み裏庭に出向いた。



そろりと壁からとりあえず覗き込むと本郷先輩はびよーんと伸びる猫を抱き上げ見つめていた。



ね……猫は伸びる、液体という話も聞いたことはあるけどあれは伸びすぎだ。



そしてなにより可愛い。



先輩全然笑ってないけど何してるんだろう……。

ぶらんぶらんと横振りをしていた。


もう少し覗こうと体を出した途端猫は先輩の拘束から逃げた。


「あっ」まずい。

先輩はこちらを見ていた。


「あ、あのすみません、ぼ、僕も猫触ってみたくて」

「あーどうぞ」とさりげなく伝えた言葉は先輩の横ポジションをゲットしたのだった。


 横にいるだけで緊張するんだけど、でも少し近づけたのはラッキーだ。

 しかし僕はひそひそ声を耳にする。



「ちょっとなにあのチビ!! 先輩の顔を撮れないじゃないの」という声だ。

「え?」



後ろを向くと三年の先輩方が見ていた。

僕は思わず立ち上がろうとした時腕を引かれた、そしてバランスを崩し倒れそうになったが先輩の掌に受け止められた、それはまるでバスケットボールを片手で掴んだ時と同じ感覚みたいに。



「ノワール来たから静かにして」と

「あ、はい」



僕は横ポジションにいた。


礼も言えず先輩の横にただただ座っていた。



黒猫のノワールは先輩にすり寄っていた。

可愛い。


手を出そうとすると黒猫は後ろに引いた。



「違う、ダメだよ猫は警戒心が強いんだ、そんなことも知らないの?」

「え、あ、はい……」

 どうしよう、思わず来ちゃったけど先輩の邪魔だったかも、やっぱ様子見てから話しかければよかったかもしれない。



 下を向いていると先輩の顔が近づいていることに気がつかなくて顔を上げた瞬間に僕は後ろに手をついた。


「いっ……」

「あ、ごめん君すごくいい香りがしたから」と言われた僕はなぜか鼓動が止まらず立ち上がり校舎へと戻った。



 ?



やばい、心臓バクバクしている、いい香りって先輩のほうがいい香りしたんだけど、てか顔近くて思い出しただけでも顔が熱い。



 クラスに戻ると授業がすぐに始まった。

でも鼓動と先輩に話しかけられたことといろいろ重なり授業に集中できなかった。


 放課後

部活に向かって着替えをしていると右手首が痛いことに気がついた。

まさかな、あの時だよね。


「祐平どうした?」

「え、いや手首痛いなぁって思ったんだけど多分大丈夫」

「悪化したら悪いし先生に保健室行くって伝えてみたら」

「うん、そうだね」



もう少ししたら、大会があるのにそんなことを言ったらきっとレギュラーを下ろされるだろう、やっと勝ち取ったレギュラーを手首の痛みで先生に知られたくない。



「はぁ……」



でもみんなで勝ち取るのが理想で、僕の行いで試合に負けるなんて嫌だしな……。



 先生を見つけ僕は駆け寄った。

「先生」

「なんだ?」

「あの、手首に痛みがあってその保健室に……」

「え、もしかしてあの時?」と声をかけてきたのは本郷先輩だった。



もちろんのこと先輩は自分のこと以外興味がないと部活いや全校生徒に知れ渡っているなのに先輩は僕に声をかけさらには心配をしてきたのだ」



「えっと……」


「ごめんね、先生俺がこの子を保健室連れて行ってきます」

「お、おう頼む」



「ちょっ!! お前この後試合」

「ごめん、誰か代わりに出てくれる?」



「あ、分かった」

続きは文学フリマ東京39またはDLsiteまたはBoothにて!

発売に関しては12月1日以降になります。

詳細などはXまたはnooteに掲載してます。

どちらとも枝浬菰と検索を

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