嵐山の風

白鷺(楓賢)

第1話 嵐山への旅立ち

久々に訪れた嵐山は、少女にとって特別な場所だった。彼女は静かに考える時間を持ちたくて、バスに乗り、一人でこの地にやってきた。渡月橋のたもとに立ち、川の流れを見つめると、心が落ち着いていくのを感じた。


観光客が行き交う中、少女は自分の道について考え始めた。周りの人々には目もくれず、自分とは何か、何をしたいのかを見つめる時間がここにはあった。竹林の小径を歩きながら、彼女は自分の内面と向き合った。


これまで、少女は親からの強い期待や周りからのプレッシャーに日々さらされていた。その結果、自分を見失い、何が本当に大切なのかもわからなくなっていた。心の奥底で密かに痛みを抱え、苦しんでいた彼女だったが、嵐山の風景がその心を少しずつ癒してくれた。


この日は、何も気にせずに、自分の道について真剣に考えることができた。竹林を抜け、静かな神社の境内にたどり着くと、彼女はベンチに腰を下ろし、少しの間、瞑想のように目を閉じた。周りの喧騒は遠く、心の中に静けさが広がっていく。


「自分らしくとは何か」


この問いが、彼女の心に浮かんできた。自分の生き方や将来について、漠然とした不安を抱えていた彼女にとって、この問いは重要な意味を持っていた。時折吹く風が、彼女の考えを整理してくれるようだった。


しばらく考えた後、少女は立ち上がり、再び歩き始めた。嵐山の風景を楽しむ観光客たちの間をすり抜けながら、自分自身と向き合う時間を大切にした。


彼女は気づいた。先のことを今考えても、答えなど出ないのだということを。まずは自分らしくいることが大切なのだ。何も気にせず、自分の心の声に耳を傾けることができたこの日は、彼女にとって特別な日となった。


夕暮れ時、嵐山の風が一層心地よく感じられる中、少女は帰路に着いた。答えはまだ見つからなかったが、その顔には清々しい表情が浮かんでいた。彼女だけの特別な感覚を味わったことで、心の中に新たな希望が芽生えたのだ。


彼女は、この日を胸に刻み、次の一歩を踏み出す勇気を持って帰っていった。


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