第23話 4皿目 スライムのシャーベット①
この日、リリアナたちはレオナルド魔道具商会を訪れていた。
セーフティカードの追加購入のためだ。セーフティカードは3回使い切りの魔道具で、使用回数を使い切ると消えてしまう。
先日の初心者講習会で2枚使用した後に、1枚は消えもう1枚は残り1回となってしまった。
ガーデンで調理をして食事をするにはセーフティカードが不可欠であるため、使用回数に余裕をもって常備しておきたい魔道具だ。
店内には所狭しと魔道具や魔導書が並んでいる。
その中には『確実にクローバーが四葉になるプランター』や『誰でも吟遊詩人のような音色を奏でられるギター』など、これを魔物相手にどう使えというのかと首を傾げたくなるアイテムも多数存在する。
レオナルド・ジュリアーニという大魔法使いは人間同士の
大陸での大戦争が300年前の出来事であることを考えるとレオナルドの年齢は当然300歳を超えているはずだ。しかしガーデンで暮らしている彼の時間は止まっているのか、外見は20歳前後の若い男性だと噂されている。
これまでこの店で買い物をした経験がないというテオが店内を物珍しそうな顔で見て回り、魔導書の棚で足を止めた。
魔導書は魔法文字で書かれており、魔力がない者には読めない仕組みになっている。
魔力は、生まれつき有る者と無い者がいる。魔力があれば訓練でそれを伸ばしていくことも可能だが、無い場合は魔法を一生使えない。
現在では魔導書を読めるだけの魔力があれば、覚えたい魔法の魔導書を読破するのが一般的な習得方法だ。
きっとテオにはなにが書かれているのかさっぱりわからないのだろうと思いながらリリアナもその棚へと近づき、テオが見上げている視線の先に目をやって驚嘆の声をあげた。
「うそっ!」
なんという偶然だろうか。
テオが見ていた棚には『スライムの味を変化させる魔法』と書かれた魔導書が並んでいたのだ。
魔導書は初級・中級・上級に棚が分かれていて、この『スライムの味を変化させる魔法』は中級の棚に並んでいる。
どうして今まで気づかなかったのだろうとリリアナは悔しがった。
「こんな魔法があるってもっと早く気づいていれば、なんの味もしないブルースライムを美味しく食べることができたのに!」
その時ハリスの声が店内に響いた。
「買うのはこれだけか?」
「待って、これも!」
リリアナは慌てて『スライムの味を変化させる魔法』の魔導書を掴むと、セーフティカードのお会計を済ませようとするハリスに手渡した。
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