第2話 暗殺者同士の戦闘
「それじゃ、準備してく……」
「待て、誰かいる」
「え、なんでわかるの!?」
「長年殺し殺されをやってるからな、少し下がってろ」
そういうと、私の前に立って構えている。
格好いい背中だなぁ~。
細く頼りなさそうだが、その背中は何故か頼りがいのある背中に見えた。
「ここを離れるぞ」
「はい」
そう言って彼の指示通り離れようとすると、扉が開かれる。
「逃げんのかよ、この臆病者」
体躯の大きい屋敷では見た事のない男が現れる。
「あぁ僕は臆病者さ、そういう君は
めっちゃ煽るじゃん。
それほど余裕があるんだろうが、明らかに体格の差があるのにできるなんてすごいなと思う。
「逃げるならその女おいてってくれねぇ? 依頼なんだわ」
「依頼?」
「あぁ、こいつの婚約者に連れてきてくれってな。 監禁するんだって」
あぁ、あいつか。
次期当主の男が依頼したのだ。
誘拐されたという事にしておいて私を婚約者としてではなく、玩具または奴隷として弄ぶきなのだろう。
「そんで誘拐したら俺におこぼれくれるってんだよ、こいつで楽しんでいいって最高じゃねえか」
男ってやつはどうしてこう気持ち悪いのだろうか?
瞳を見て見定めるまでもない、こいつは根から汚れている。
そして隠すことなく私をなめるようにみて気持ちの悪い顔になる。
「何ならお前も楽しむか?」
「楽しむの?」
思わずレイルを揶揄ってしまった。
出来ないのをわかってるから、出来るならとっくに私を襲っているに違いないからだ。
彼は私の問いに一瞬「何言ってるんだろう、この子は」みたいな目をすると、「僕は楽しまないから、あっち行くか?」と意地悪を言うので、「意地悪、行くわけないって知ってて言ってる」と更に拗ねたように揶揄う。
「意味が解らん」という視線で呆れたようにこっちを見てくる。
少し揶揄いすぎたかしら、反省反省。
「だそうだ、残念だな」
「ふざけてるのか?」
ふざけてますとも。
「僕は至って真剣だけど? こいつは知らんけど」
「分かってて言ったくせに」
「何かお前ムカつくな」
しょうもない掛け合いのせいで苛立ちを隠せないのか、彼に襲い掛かる。
「大振りすぎるよ、君。 うん、欠伸が出そうな程に遅い」
気が付くと敵の両腕から血飛沫が舞い後ろへ吹き飛んでいた。
「どうする? まだやるかい?」
「やらない、見逃してくれ……」
後ろに下がると、膝をつき男は泣きながら命乞いをしてきた。
あの強気な発言は何処に行ったのだろう?
まぁ、両腕がなくなれば何も出来ないし、仕方ないか。
私なら命乞いはせず最後まで抗うけどね、根性ないなぁ~。
「俺は依頼されただけで仕方なかったんだ。 お前も暗殺者ならわかるだろ?」
「楽しんでたじゃんお前」
レイルが黒い何かを投げると、彼の額に突き刺さり彼の命を絶った。
「気分は大丈夫か?」
気分?
あぁ、人が死ぬところを見て気分が悪くなってないか聞いてくれたのかな?
優しいなぁ~。
「大丈夫だよ、守ってくれてありがと」
「あ、あぁ……随分と慣れてるんだな」
「慣れてないよ、だって人が死んでるんだよ?」
笑顔、変じゃないかな?
必死に笑顔を作ろうとするが、笑い方がわからないので不安だった。
「無理して笑わなくていいよ、辛い時は辛いっていった方がいい」
辛くはないんだけどなぁ~。
最後に笑ったのが遠い昔なので、笑いたいのに笑えないだけなのだ。
でも、彼からしたら私が辛くても気丈に振る舞う為に笑っていると思っていると思うと申し訳なく思えてくる。
「さて、敵はいなく……!?」
彼が私の身体を押すと、後ろに飛んでいき尻餅をつく。
イッタ~!!
「へぇ、今のをよけるんだ」
「危ないじゃないか、彼女の綺麗な腕が切断したらどうしてくれんだ」
え、今綺麗っていった!? 言ったよね!?
でも、出来れば可愛いとか言ってほしいなぁ~、えへへ。
それで、あんなことやこんな事を……いやいや、早まっちゃ駄目よ!! ちょっとずつ距離を詰めないと……でもでも……。
変な思考が頭を駆け巡る。
「おいてくぞ」
私に顔を近づけ気づいたのを確認すると、先を歩いていく。
「あ、待ってよぉ~!!」
そう言うが、彼の速度は変わらない。
彼に追いつき横顔を見れば見る程格好良く見えてくる。
顔のいい貴族の相手を沢山させられてきたが、彼の方が私好みの顔だ。
「悪い、少し触るぞ」
窓を見つめると、私を抱きかかえる。
え、えぇ~!! 重くないかな!?
「重くないですか?」
最近太ったし、重いとか言われたらどうしよう!?
こんなことなら、あんなに食べるんじゃなかったぁ~!!
あの時一杯食べた自分を呪うが、時は帰ってこない。
まぁ、帰ってこなくていいんだけどね? 彼と出会えたから帰ってこなくていいんだけど、そこだけ改変できないかなぁ~なんて思っちゃうわけ。
「行くぞ、しっかり捕まってろ」
そういわれ私が彼の首元に手を回し、抱きしめ目を閉じると彼は思いっきり踏み込むと同時に冷たい強風が私を襲う。
飛んでる!?
強風が止み、辺りを見渡すと、空を飛んでいた。
これが、魔法か~。
「翼を広げ大空を羽ばたかん、魔翼」
彼は何かを呟くと、月明かりに照らされた漆黒の翼が現れ共に王都の外にある場所に降り立った。
この魔法について聞きたい部分があったが、彼の感じからしてまだ安全圏ではないと思ったから私は口を噤んだ。
「このまま先の村に向かうよ」
そうしてなんだかんんだ歩いていくと、王都からそれほど遠くない村に着いた。
紅髪の可愛らしい私と同年代くらいの女の子が彼に気づき近づいてきた。
「お、帰ってきた。 標的は無事やれた?」
「あぁ、余裕でな」
なんか親しそう、どういう関係なのだろう?
「そっか、そんでその子は?」
「拾ってきた、名前は……なんだっけ?」
……は?
自己紹介したよね?
「ユナです」
「ユナちゃんね。 私はミリネ、ミリネ・ベリルよ、よろしくね。 それで、どうしてこんな可愛い子をどこで拾ってきたの?」
「今回の標的を始末した場所で殺されそうになってた場所」
「……はぁ? え、何? その子標的の子供か何か?」
「いや、彼は今回の標的の息子の婚約者らしい」
「へぇ、婚約者ね。 んで、その標的の息子の嫁をなんで連れてきたの? 可愛いから?」
そうなの?っと私は首を傾げ彼を見るが、「んなわけあるか、確かに可愛いけどここに来たのは彼女の意志だ」と彼女に告げた。
さっきは可愛いっていったくせに。
まぁ、私の意志で来たのは事実なので、反論する必要はない。
「本当にぃ~? 行く所ないなら家来るか?っていったんじゃないのぉ~?」
それだったらどれだけいいか……はぁ~。
表情を抑えながら、心の中で深く溜息を吐く。
ミリネさんだっけ?
彼女はなんというか明るい感じの女の子のような第一印象を受けた。
彼の事はどう思っているのかは今の所惚れているに8割、友達として見ているの2割程度だ。
何にしても警戒しないと。
「僕を何だと思ってるんだ」
「あはは、ごめんごめん」
私の事そっちのけですか、そうですか。
「全く、それよりミリネ、この子に服を与えてやってくれ」
「うん、わかった。 行こ、ユナちゃん」
「はい、それでは」
私はそう言ってミリネさんについていくと、ある家に着き「ここは?」と尋ねると、この村の服を扱っている店といった。
中に入ると、なんというか今まで見た服装とはまるで違う脱ぐ用の服ではなかった。
「いらっしゃい、あらその子は?」
「この子はユナっていうの、ちょっと事情があって預かることになったの」
「ふ~ん、それにしてもその服装……なんか嫌な感じね」
何かを察してくれたような憐れむような目で見つめてくる。
服が開けているので、襲われた所を助けてもらった。
そんな風に解釈してくれているように思える。
実際はただ単にあの変態共の趣味なのだが、黙っておこ~っと。
これから末永~くお世話になるから、悪い印象はなるべく避けたいからね。
「着替えを急いで用意するから、向こうの試着室で脱いで待ってて。 ミリネ、案内頼める?」
店主の言葉に何かのポーズをとって「了解であります!!」っと言って案内してくれる。
「ボロボロの服じゃなんだし、あれ着ときなよ」
そう言ってローブを渡される。
同性と言っても恥ずかしいと思ってくれたのだろう。
「ありがとう」というと「どういたしまして」と可愛らしい笑みで返してきた。
眩しい、彼女が眩しすぎる。
そうしてしばらくして店員さんが服を持ってきてくれた。
「臨時で合いそうな服はこれくらいだけど、きつかったら言って、他のを持ってくるから」
「ありがとうございます」
その服は肌の露出が抑えられた服だった。
脱がせにくい構造なので、そういう面の服という事ではないのだろう。
服を着ると、なんだかごわごわした服装のせいか、めちゃくちゃ動きにくい。
それに胸元が圧迫されているようで痛い。
「どう? 大丈夫そう?」
「少し胸元がきついかもです、もう少し緩いの無いですか?」
「ならこの服はどう?」っと言って同じ服だが、先程の物とは違い少し胸元に余裕がある服だった。
うん、これなら大丈夫そうかな?
元々、薄着のせいか違和感があるが、締め付けられるとかそういうのは無いので問題はないだろう。
ミリネに「大丈夫」と伝えると、私は試着室から出て「どうかな?」っと彼女に問う。
だって仕方ないじゃない、こういうの慣れてないんだから!!
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