八 エビはどうして赤いのか



 昔、アホな男がいた。


 あるとき、知人がアホ男に料理をごちそうしてくれた。

 アホ男は、料理に入っていたエビが真っ赤であることに驚いて、

「こいつは、生まれつき赤いんですかい? それとも絵の具で塗ったんですかい?」


 知人は大笑い。

「塗らない塗らない。

 エビっていうのはな、生まれたときは青いんだが、釜で茹でると赤くなるんだ」


 アホ男は、すっかり感心してしまった。

「へーえ! そうなんですか、不思議なもんだなあ……」


 数日後、アホ男が道を歩いていると、侍の行列に出くわした。

 馬に乗った侍の前を、たくさんの中間ちゅうげん(武家の召使い)たちが走っている。

 その手には、真っ赤な朱塗りの長槍が、全部で二十本ほども握られていた。


 これを見たアホ男、感心して手を叩いた。

「世の中は広いなあ! 不思議なもんだ!」


「あんたは何を感心してるんだ?」

 と、そばにいた人が尋ねると、アホ男が答える。

「あの槍の真っ赤な柄は、火を焚いて皮をいたものだろう? あんなに長い槍を茹でるような長い鍋が、よくあったもんだねえ!」

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