【BL】よくあるアナザーワールドで目覚めたら

Kanon

第1話 村人か冒険者か

初めての一歩は不安だと言うけれど、俺の一歩は常に不安だ。そして今、この世界に飛ばされ不安におののいている。思えば、大学からの帰り道でトラックに跳ねられて、そこから記憶が飛んでいる。もしかしなくとも、これは異世界なのではないだろうか。


「誰か通りかからないかな」


徒歩で歩いている人が見えない上に、空気が爽やかだ。東京のアパートではない事は明らかで、辺りを見回す。目覚めて自分の服装を見ていなかった事に気付いて、目をやるとまた驚く。


地味な服


耳も尖ってないし、力持ち風でもないとすると杖でも持っていればと考えたがそれもない様だ。ベージュと茶色で統一感はあるがそれだけな服装は村人にも、冒険者(レベル1)にも見える。結果何もできない人間なのではないかと思われた。


「おい、そこのお前」


空から声が聞こえた。


「だ、誰ですか?」


空から大きな馬に乗った男が声をかけていた。飛ぶ馬から地面に降り立つとこちらを見た。長身で細身の眉も目も凛々しいイケメンだ。長い銀髪を束ねているが、どうみても男性だ。


これ、馬じゃない?


「ペガサス!?」


「何だ。珍しくもないだろう?それより、お前行き倒れ一歩手前だろう」


「行き倒れ…ですか?」


首を傾げると、首根っこをつかまれる。


「な、何するんですか!警察呼びますよ」


「けいさつ?何を言ってるのかわからないが、とりあえず来てくれないと困る」


扱い雑すぎだろ


「説明!説明が無いですよ。誰に頼まれたんですか?」


「国だ。さ、これをこう巻いて、よし。乗れ」


「ひぃええぇ、し、死ぬぅうう」


ペガサスが飛び立つ瞬間、空が近づいて目を閉じた。見知らぬ男にしがみつきながら無宗教だが神に祈った。


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