反逆の軌跡～PANTA,頭脳警察作品解説～

第43話 PANTA『CACA』

　第19 話にて、ちょっと触れていた『CACA』ですが、ようやく登場となります。

『PISS』が『小便』という意味だから、次に出すのは『大きい方』の『CACA』だと、冗談めいた事を度々言っていたPANTAですが、十数年たっても発売する気配もなかったので、単なる冗談かと思っていたら、2006年に、まさか本当に発売されるとは思っていませんでした。

　PANTAはこんな感じの事も言っていました。

「都合でアルバムに収録されなかった曲は沢山あるけれど、『宿便』となって残っている曲は、いつかまとめてアルバムにしたい」

『CACA』は、まさにそんなアルバムです。収録曲はこのようになっています。

　01　MUSHUS～ムシュフシュの逆襲

　02　Melting Pot

　03　Geard

　04　新宿A子バックレブギー

　05　Demon de midi～午後の悪魔

　06　Damascus～ダマスカス

　07　フライデーフライト

　08　朝を呼ぶ男

　09　GRU

　10　アラカルト69

　11　Pas De Deux

　12　Crusin’

　13　J

　ライブで演奏されてきた曲も多いですが、アルバムのコンセプトに合わなかったりと、スタジオ録音をされる事がなかったものばかりです。HALの時代の曲が多いのも嬉しかったりします。PANTAは、アルバムごとのコンセプトがしっかりしているので、アルバムに収録されなかった曲は、後に使われる事は殆ど無かったと思われます。だからこういった、レアトラック集的なものを作るしかなかったのでしょうね。

　ファンとして嬉しいのは、『Melting Pot』、『Geard』、『Crusin’』といった、HAL時代の曲でしょうけれど、太陽を打ち上げないと朝が来ないと思い込んでいる、精神が病んている男の事を歌った『朝を呼ぶ男』といったヘヴィなナンバーも改めて収録されているのは嬉しいです。そして、『クリスタルナハト』の先を見ているような曲である『Damascus～ダマスカス』の収録。ライブでもあまり演奏していないなので、まさかの収録で驚きです。そして収録されると思っていた『氷川丸』は未収録でした。今後、発表する予定だったのかもしれませんが、是非、収録してほしかったなと。あと、白竜に提供した名曲『Pas De Deux』。やはり名曲です。

　演奏しているのは『不知火』ですが、『Crusin’』を演奏している映像がありましたので載せておきます。

　https://www.youtube.com/watch?v=WI0UVMP7rSI

　収録時のメンバーは、『陽炎』と命名された、歴戦の強者が中心となっているもの。

　中谷宏道さん(B)、菊池琢巳さん(G)、中山努さん(Key)、小柳"Cherry"昌法さん(Dr)がメンバーとなっています。なお、小柳さんは、元リンドバーグだとか。

　このメンバーにトシが加わったら、充分、頭脳警察を名乗れるくらいの実力者揃いですね。後にこのメンバーでツアーを行ってもいます。なお『不知火』は、菊池琢己さんの代わりのギターに鈴木匠さんが参加しているものです。

　余談ですが、このアルバムの録音は、新宿歌舞伎町の雑居ビルの風林会館5階にある老舗グランド・キャバレー跡地にレコーディング機材を持ち込みレコーディングしたという異色作です。なお初回盤には、レコーディング風景やプロモ映像等を収録したDVD付きです。もっとも、初回盤以外は見た事ないですが。

　その中に『Melting Pot』の映像がありますので、是非聴いてもらいたいですね。

　https://www.youtube.com/watch?v=Q2yVTa9_tkQ

　このレコーディングは、新宿区役所なども絡んだ『歌舞伎町ルネッサンス計画』の一環で行われたという事ですが、詳しい事はよくわかりません。

　公開レコーディングの終了後には、関係者を招いての終了パーティーが行われたという事ですが、そこで行われたミニライブは、その場でCD-R化されて、PANTAのサインを書いたものが配られたらしいです。う～、欲しいなぁ。

　PANTAは生前、クリスマスに反対するようなアンチクリスマスイベントをやっていたのですが、初回にスペルを間違えて『UNTI X’mas』と書いてしまい、以後、これが定着してしまいます。『CACA』と絡めたのか、それとも素で間違えていたのかはわかりません。