8月10日・曇のち晴れ

 ふと懐かしい友人から連絡が来た。


「よう元気か?実は〇〇の配信でお前がコメントしてるのたまたま見かけてさ」


 もう十年近い仲だから、無機質な画面からでもあいつの声が脳内で再生される。


「あー最近切り抜き見て気になってな。ちょうどライブやってたし観てみたんだよ」

「そうだったんかぁ。いやぁお前がこういうの観ると思ってなくてな」


 言葉の最後には嬉しそうな顔が添えられている。

 連絡を取ることさえも一年以上前だったからだ。

 そんな時に、ふとあいつの過去が蘇る。


「お前はもう大丈夫なんか?」

「なにがだ?」

「観てたって事はあの人推してんだろ?」


 用事をしてるのか、はたまた言い難いのか、即答だった文字のキャッチボールが突然に止まる。


「まぁ大丈夫だろ」


 含みのある言葉に、なんて返したらいいかと文字を打つ指が動かなくなる。消しては打ち直しを繰り返してるうちに、あいつから更に長い言葉が送られてきた。


「見た目はアニメっぽくてもさ、画面の向こうには人が居んだぁ。嫌味を送りゃ嫌われるし褒めりゃ喜んでくれる。俺達と同じで好きな人も出来れば結婚だってしてるかもしれん。ほんとに居ないかもしれないし、配信終わったら「終わったぁ!」って言いながら彼氏に抱きついてるかもしれんだろ?そんなん俺にはわからん。だから最初から「居るもんだ」と思って推してるよ」


 彼なりの答えが出たんだな。

 少し偉そうに言いながら話すあいつの姿が思い浮かぶ。


「そうか、まぁ俺はたまたま見に来ただけだから。気になったらまた来るよ」


 そう返信して夜勤のために眠りにつく

 夜中に起きて覗いてみると一通の通知が入っていた。


「ありがとな」


 彼なりに精一杯推していた配信者が引退の時、実は彼氏がいましたと明かされた。

 それだけじゃなく、その相手の職業が小さいとは言え会社の社長だった。


 結局みんな金持ちに行くのかよぉぉぉ!なんて叫びながら泣いてたのはさすがに見るに絶えなかった。


「また飯でも行こうぜ」

「はいよ」


 あいつなりに前へ進めたのかな。

 既読がつかなくなった画面を閉じると、俺はゆっくりと布団へ体を預けた。


 終わり



 どうも大将です。

 先日起こった事を掲載してみました。

 

 自分の友人は、推していた人が引退の時に「実は彼氏がいます」とカミグアウトされ、更には相手は社長と言う、男としてはある意味ぼろ負けの最後を迎えていました。

 彼曰く「ガチ恋勢には一番痛い」との事。


 残念ながら自分にはその感覚がわからないので何ともですが。

 まぁ彼なりに擬似的な失恋を乗り越えたって感じでしょうか。

 始まってすらいないんだけどな……。


 では今回はこの辺で。

 ありがとうございました。

 日記ってこんなので大丈夫ですかね……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る