第17話 『1次避難』非常時持出袋②~基本に立ち返って

 今回は、前話で述べた各個別の品目に対しての注釈と解説を添えていきたいと思います。

 内容は、あくまで一例で内容の正確性を担保するものではありません。本文を読んでいただいて興味を持ち、ぜひご自分で内容に関しての精査と理解を深めてください。


 ○  人数分の携行食料・飲料水(割り箸、紙コップ、紙皿、缶切り、)


 ここでは1次品目(避難所へ向かう場合)として扱う場合の例です。

 カロリーメイト等ブロック栄養食、乾パン、チョコレート、野菜ジュースなどがこれに当たります。加熱や加工を必要とせず、封を切ってそのまま食べられるものにしましょう。レトルト食品(冷たいままで食べられるタイプ)や缶詰も使えますが、重量がありかさばるので1次ではなく2次品目(次話以降の解説)に含めたほうが良い場合もあるかもしれません。


 災害時食料として思い浮かぶものに、カップ麺やレトルト食品、パックご飯があると思いますが、一次避難の持出袋に含める場合は上記の物も一緒に混ぜておいたほうが無難でしょう。

 大規模災害の場合、避難直後の混乱した状況で、お湯を沸かしたり調理したりと言うのは現実的ではありません。目立った行動は軋轢を生む心配もあります。避難所ではなるべく手間を掛けず、ほかの人と同じ食事をした方が余計な詮索やトラブルを招かずに済みます。1日目は、すぐ食べられる物で急場をしのぎ、情報収集と現状把握に努めましょう。

 

 飲料水は重量もあり、かさばるものです。なるべく多いほうが良いのですが家族構成や地域性、避難所の環境なども考慮して量を考えましょう。1次避難でしたら最低500mlと考えて1リットル~1.5リットル程度で量の増量を検討してください。



 ○ 常用している薬品(お薬手帳も)、常備薬


 普段、常用している医薬品がある場合はその準備もしましょう。合わせて、お薬手帳の写しなども用意しておくと、避難生活が長引いた際の医療サポートが受けやすくなります。


 ○ 貴重品(印鑑、通帳など)


 避難生活が長引くと現金が必要になったり、また長期に渡って自宅に帰還が困難になる場合も想定されます。貴重品はなるべく肌身離さず携行するよう心がけましょう。災害が長期化し治安が悪化すると、自宅への侵入、盗難も心配されますので、その対策も兼ねています。


 ○ 筆記用具、油性マジック、布ガムテープ


 意外と忘れがちなのが、筆記用具。大きめのノートが一冊あると日々の記録をつけたり、家族の健康管理などがしやすくなります。また、油性マジックと布ガムテープがあれば、注意書きのタグにしたり様々な用途に対応できます。避難所での間仕切りの作成時にダンボールを貼り付けたり、雨具の応急処置など用途が多岐にわたりますので用意しておくとよいでしょう。紙製のガムテープは重ね貼りができなかったり文字が書けないなどの不利がありますので必ず布製にしてください。


 ○ 家族写真、連絡先等


 万が一、家族とはぐれた場合の顔写真の代わりになります。家族が病院へ搬送された際には連絡先が必須になりますので、家族全員に持たせておくとよいでしょう。


 ○ トイレットペーパー


 トイレでの使用の他、ティシュペーパー代わりに使用したり様々な用途で使えます。状況にもよりますが、水に流せるほうが有利な場合がありますので、一本は必ず用意しておきましょう。


 ○ 衛生用品

  (傷薬・絆創膏・消毒綿・マスク・ウエットティッシュ・除菌手拭きシート)


 傷薬は、目にも使える抗生物質入り眼軟膏があると、様々な用途に使えますのでお勧めです。夏場なら湿疹用、虫刺され用もあるとよいでしょう。絆創膏も必ず用意しましょう。マスク、ウエットティシュは言わずもがな。除菌シートは手洗いができない状況で重宝しますので、ウエットティシュとは別に用意したほうが良いかもしれません。


 ○ 携帯トイレ、大型ポンチョ


 トイレ問題は、避難生活で大きな課題となる部分です。家族の人数分×3個くらいは用意しておいたほうが無難でしょう。山間地ならば、最悪山に入って済ませるということもできるかもしれませんが、都市部の場合は死活問題になります。食事は我慢できてもトイレは我慢できません。この点に関しては万全を期しておくことが重要です。

 また、処理の際に必要になりますので厚手で不透明のビニール袋等も併せて用意しておいて下さい。

 大型ポンチョは、個室トイレが機能しない場合の緊急手段となりえます。頭からすっぽりと被りテントのように視線を遮ることが出来ますので、用意しておくとよいでしょう。防寒、防水対策にも使えます。

 また、用意していても実際に使ったことがないという人も多いのではないでしょうか。これは、初めてだと使用時に戸惑ったり、我慢してしまったりということにも繋がります。

 実際使ってみると、音が気になったり、使用後の処理で手間取ったりということもあります。

 これは必ず、一度ご自宅で実際に試用体験をしておいてください。


 ○ 歯磨き用具


 普段の生活習慣を変えると想像以上のストレスになるものです。日常の習慣維持の一環として、歯磨きをお勧めします。これを欠かすと免疫力の低下に繋がり体調を崩すこともあります。歯ブラシが使えない場合もありますので、水の要らない歯磨きシートなども用意しておくとよいでしょう。


 ○ 懐中電灯、ランタン、ヘッドライト(電池も)


 夜間の行動の際に必須となるものです。夜、トイレに行く際に置いて使えるように、ランタン型のものがあると便利です。予備電池も用意しておきましょう。

 ヘッドライトは両手が使えるので、作業時などにも重宝します。


 ○ レインコート、雨合羽、スリッパ


 雨に濡れて体温の低下を招くと、一気に体調を崩す原因となります。天候の悪化時でも、外の作業を欠かすわけにはいかない状況は十分にありえます。最低でも携帯用のレインコートは人数分用意しておきましょう。布ガムテープがあれば破れても当座の手当が出来ます。

 スリッパは、避難所内での生活に必要になります。土足エリアと土禁エリアはきちんと分けないと衛生環境の悪化に繋がります。避難所に行く場合は必ず用意しましょう。


 ○ 着替え、下着類


 濡れたままの服を着続けることは、体調に悪影響があります。最低1着は着替えを用意しましょう。下着類は多めにしておくと安心です。避難所での洗濯は、ほぼ無理である場合がほとんどです。使い捨ての下着類があると便利ですので検討しておくとよいでしょう。冬場は、防寒対策も忘れずに。


 ○ 携帯ブランケット、アルミ保温シート


 避難所での防寒対策は、基本的に個人に任せられます。毛布の支給があればよいのですが、なるべく自分でも用意しておくほうが無難です。災害用の毛布でなくとも、布団圧縮パックで潰して小さくしておいた毛布を用意しておくとコンパクトに携行できて便利です。

 アルミ保温シートは、小さくまとめられて携帯には便利ですが、身体に沿わず寝心地も良いものではありません。物によっては、ガサガサと音を立ててストレスにもなります。あくまでも寒さを凌ぐための応急的なものと捉え、これをメインにしたり過信はしないようにしましょう。特に、避難所ではなるべく毛布の試用を優先するようにしましょう。

 それとは別に、やむを得ず屋外で一夜を過ごす、等という厳しい環境下での生命維持の際には、このアルミシートは寒風を通さないので役に立ちます。上着の内側に仕込むなどして活用しましょう。そのため、携帯ポーチのような普段の行動時に持ち歩く防災用品に仕込んでおくと非常に有用です。


 ○ 耳栓、アイマスク等


 避難所は、就寝そのものが困難な状況と捉えておくべきでしょう。隣のいびきがうるさくて寝られなかったという話もちらほら聞こえます。時間をずらして日中眠るという選択肢も考えておかなければなりません。耳栓やアイマスクはその際に重宝します。


 ○ 季節用品(夏はタオル類や、制汗シート。冬はカイロや防寒具など)


 奇しくも、夏場の大災害というのはまだ私は経験がありません。ので、夏場の備えに関してはこれでは不十分かもしれません。お住まいの地域に合わせて、適宜検討を加えてください。タオル類は、あればあるだけ便利です。しかし、洗濯ができない状況というのには留意するべきです。汗ふきシートや、ボディペーパーなど使い捨てのものを多めに持っておくと良いでしょう。

 冬場の場合は、携帯カイロや防寒具も忘れずに。

 非常時持ち出し袋も、衣替えに合わせて内容を変化させないといけません。準備したから大丈夫、ではなく定期的に中味を精査し入れ替えることが大切です。


 ○ 携帯ラジオ


 大規模災害が起こると、通信網が使えなくなる場合もあります。スマホだけに頼っていると不都合があるかもしれません。その際の有効な手段として、ラジオを持っておくと便利です。音のない生活は、ストレスにもなり得ます。防災用品の中に一つ持っておくと役立ちます。電池も忘れずに。


 ○ ヘルメット、軍手(できれば革製かゴム)


 避難の際や、家屋から物資を取り出す際、作業時など頭部を護る為に重要になります。子供用のものが準備できない場合は、自転車用に使っているものでも無いよりは充分役に立ちます。かさばるものでもありますので、まずは身の回りで代用できるものから始めましょう。

 水に濡れる作業も多いですので、できれば防水性の手袋があると便利です。ガラスや瓦礫の撤去作業などの際には、丈夫な手袋があったほうが良いでしょう。なにもない場合は軍手だけでも用意しておきましょう。


 ○ ゴミ袋、ポリ袋、レジ袋等のビニール袋


 上記を見て分かる通り、多くの使い捨て道具が多用されます。ゴミは必ず各自において処理できるようにしておきましょう。排泄物等の処理も必要になりますので、厚手の黒い不透明なゴミ袋(できれば排泄物等処理用の専用品、匂いも防げます)の準備が必要です。

 レジ袋なども応用が効いて非常に便利です。大きなポリ袋ばかりだと使いづらいこともありますので、まとめて数枚物資に入れておくと役に立ちます。


 ○食品包装用ラップ


 いわゆる、サランラップやクレラップに代表される物で、非常にマルチ用途な一品です。

 何に使うかと言いますと、まず第一に『食器を包む』という用途が挙げられます。

 在宅避難においても避難所においても、水の無い状況で食器を洗浄することは非常に困難です。そのため、手持ちの食器をこのラップで包み使用後にラップだけ破棄する、という方法で洗浄に代えることができます。

 その他、筆記用具とメモ帳等を包んで防水したり、着替え等を包んで湿気から守るといった使い方。怪我をした際の包帯替わりにも重宝されます。

 兎に角、水濡れと汚れに見舞われることが多い被災地生活。防水防湿と防汚、衛生管理に非常に便利な一品です。余裕があれば一本持っておくと非常に便利でしょう。

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