第33話 保健室
「どうしたの!? その格好!?」
英美里が今までにないほど困惑した様子で歩み寄ってくる。
「保健室行くよ」
「……」
答える気力すらない。
英美里に引っ張られ保健室まで歩く。
途中、様々な噂が校内に広がっているのを感じる。
保健室に着く。
先生がいない。
「先生探してくるから、そっちにあるジャージに着替えて」
「うん」
絞り出すように声を上げ、僕は水道水とペンキで汚れた制服を脱ぎ始める。
「バカ。そういうのはカーテンの奥!!」
英美里の言う通り、ベッドの周りにあるカーテンの中で着替え始める。
さっそく英美里は先生を探し始めているらしい。
僕は小さくため息を吐き、ジャージに着替える。
ちょっとぶかぶかだけど、文句は言えない。
「あら。なにがあったのかしら?」
保健の先生がやってきて僕を見るなり心配そうに眉根を寄せている。
「鳥の糞ね。消毒してぬるま湯で落としましょう。そのままだと健康被害があるかも」
そういえば鳥の糞には雑菌が含まれているんだっけ。
そんなことにも気が回らないほど、今朝の夢はショックだった。
今でも脳裏に焼き付いている。
先生にされるがまま、鳥の糞を落としていく。
「英美里、さんは?」
気になっていたので訊ねると、保健の先生は苦笑を浮かべる。
「授業に行かせたわ。彼女さん?」
「違います」
即答すると、驚いたように目をパチパチとさせる保健の先生。
「ふっ。青春ね」
いいたいことが分からない。
「とれたわ。制服は洗濯機に入れるわね。ペンキは除光液で落とすしかないわね」
「すみません」
「なんで謝るの?」
なんで?
そりゃ、
「迷惑をかけてしまいました」
「そう。でもね。そう簡単に謝るべきじゃないわ。あなたは自信がないみたいだけど」
「……」
自信がない。
それは間違っていないだろう。
だが、こんな性格になったのは尊厳を破壊されたから。
いじめは僕の精神を侵略し、蹂躙し、破壊した。
「……キミ……沢田くんだっけ? 悩みがあるなら先生が相談にのるわよ?」
「ダメなんです。自分で答えを出さなくちゃ意味がないんです」
「そうかしら? 答えなんて他人と触れあわないと分からないわ」
「え?」
「他人は鏡よ。自分の言葉が相手に影響して、自分を引き立てることができるわ」
僕は理解ができずに戸惑う。
「例えば、怒っている人がいたとして、その人を見ると怖いでしょう?」
「はい」
「それって、他人が自分に影響を与えている証拠。その中から見つかることもあるわ」
それって僕が自分の考えを周りに話すことで、自分の考えが変わると言いたいのだろうか?
この先生になら相談できるかもしれない。
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