第33話―誰が為の requiem

「……なぜ、ジャックの身体を貴様が使っている……!!アリオスッ……!!」


その姉上からの問いに、アリオスは微笑む。


「さすが、魂に精通している〝紫の末裔〟だね。まさかここまで早くバレるとは思わなかったな」


相変わらず、何を考えているのか解らない眼で、奴は私たちを見回す。

そして姉上の先程の問いに、ヴァン殿たちは眼を見開いている。


「え……?アリオス…って、〝魔女狩り〟の……?」

「何……?カレン様が言っていた奴か……!」

「へえ、僕も有名になったもんだね……っと」


そうして、奴は私たちの剣を弾き返す。


「せっかく新しい身体を得たんだし、しっかり有効活用しないとね?」


そう言って不敵な笑みを浮かべるアリオス。


「じゃあ、裁定しようか。ここにいる全員、死刑ね」


奴がそう言った瞬間、私の背中に悪寒が走った。その悪寒を消すべく、私は魔力防壁を最大出力で発動させ、打ち消す。

私以外の皆も、何とか相殺に成功したようだ。ラグナ殿に至ってはケロッとしている。恐らく、スキルの“格”が違うのだろう。

だが―他の隊員は違った。

およそ1割ほどだろうか。ジャックのスキルを無効化できず、生命反応が無い者がいる。


「アリオス……貴様ァッ!!」

「さあ、まだまだこれからだよ。―食らい尽くせ、〚暴食グラトニア〛」

「ッ!?」


その瞬間、生命反応が消えていたはずの隊員たちがゆらりと起き上がり、周りの騎士たちを攻撃し始めた。


「どうしたんだ!?」「おい、目を覚ませよ!」


そう口々に叫ぶ騎士たち。

それに、私の怒りが爆発する。


「殺しに飽き足らず、死者を弄ぶなどと……!どこまですれば気が済むのですッ!!」

「僕は〝魔女狩り〟だ。君たちを殺すためなら、どんな手段だって厭わない」

「……?」


そう言う奴の眼は、虚ろなのに、どこか悲しそうだった。


「やっぱり、さすが近衛騎士団なだけあるわね……。一人一人のレベルが高すぎる」

「とりあえず、こいつらをどうにかしてやらないとな。―絶龍刀、極致其の壱、“雷龍閃斬らいりゅうせんざん”ッ!!」

「私がやります。少し、時間稼ぎをお願いしてもいいですか?」


私がそう申し出ると、姉上とラグナ殿が顔を見合わせて、不敵な笑みを浮かべる。


「じゃあ、しんがりは受けよう。お前の力、見させてもらうぞ?」

「ええ、お任せを」


そう言って私は魔力を操作しはじめる。行使するのは、私の固有オリジナル魔法。

軽やかに、包み込むように、私は詠う。


「刻もう、狂荒せし空虚なる魂の奏でるを。喰らおう、止まぬ魂声かんせい、鎮めるが如く。 〚魂喰イソウルイーター〛―“鎮魂歌レクイエム”ッ!」

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