勇者編

第二十二死 犯罪歴

「まったく、何なんですかね!あの人たちは!」

「同感…珍しく意見があったね。」

「そうですよね!ご主人に助けてもらった恩を仇で返して…」


((それを葛葉さん『貴方』が言うのか…))


「ところで委員長さん…」

「どうしたの葛葉さん。」


顔を見合わせにこりと微笑む。


「この縄…そろそろほどいてもらえませんか…?」

「うーん……ダメ♪」

「ですよね〜…」


あれから僕達は二時間、三時間ほど待っただろうか。再び街に向けて歩き出していた。


一時間ほど歩くと街への入り口と思われる門が見えてくる。門の前には人の列が連なっていた。


「これは…すごい人の数ですね。」

「物語くん!あそこが最後尾みたい。取り敢えず並ぼう!」


・・・・


「ふむ…よし!通っていいぞ!」


あれから何時間経ったか…思ったよりも列が長く、空も暗くなっていた。


前にはあと一人…


「物語くん寒くない?大丈夫?」

「はい、大丈夫です。小栖立さんこそ、スカートで寒くないですか?」


そう…現在僕達は未だに学校の制服。そりゃそうだ、いきなり異世界に連れてこられたんだから替えの服なんて持ってるはずがない。


ただ、あの一つ目の化け物に襲われたとき、僕の制服はぼろぼろになってしまい正直言って着るとかいう次元の話ではなかった。


そのため小栖立さんからブレザーを借りて着ている。ズボンは何とか無事ではあったので僕は変態にならずに済んだというわけだ。


「よし!通っていいぞ!」

「物語くん!私達の番みたいだよ。行こ!」


小栖立さんに連れられながら前へと進む。


目の前には門番と思われる人達が立っていて中々に重そうな鎧を着ている。


「ではライセンスを確認させて―ん?そいつは何だ、何でぐるぐる巻なんかにして…捕まえた罪人かなんかか?」

「え?」


そう言われ小栖立さんは葛葉さんを見る。


「……(・.・;)」


「……(^v^)」


「……はい!そう―」

「いやいやいやいや違うんですよぉ!!怪我してるので運んでもらってるだけです!!」


あまりの必死さに門番の人は少し引いていた。


「そ、そうか…ならば何故縄でぐるぐる巻に?」

「い、いやそれは…」

「そういうプレイです。」


言いあぐねている葛葉さんの代わりに小栖立さんが答えたのだけど、そのせいで何か誤解を生んだ気がするのは僕だけではないだろう。


その証拠に葛葉さん…固まってるし。


ちらっと門番さんの方を見ると門番さんはかなり…いや物凄く引いていた。


・・・・


「ゴホンゴホン!それでは改めてライセンスを確認させてもらう。」

「「「ライセンス?」」」

「ん?何だ君たち持ってないのか?」


ライセンスというと…あれか?個人を証明するための情報カードみたいなやつ?


ん?…ちょっと待ってよ…


バッ!とそんな効果音が聞こえてくるくらい勢いよく小栖立さん達と顔を合わせる。


なんてったって異世界に来てから森にいたせいで僕達そんなの持ってない…!


「ははははッ!そんなに焦んなくても大丈夫だ。ライセンスを持ってないってことは君達王国の外から来たんだろ?今思えばその服だって王国だと珍しい服装だしな。」

「は、はい!少し遠いとこから来ました!」


僕がそう言うと門番の人はただ、「そうか、そうか!」と言って笑っていた。


「そ、それで…僕達って街に入れるんですか…?」

「あぁ!問題ないぞ!ただ、この水晶に触れてもらう。」


そう言って取り出したのは手のひらよりも一回り、二回りほど大きいサイズの水晶玉だった。


「えっと…?これは?」 

「これはだな、触れただけでそいつの犯罪履歴が分かるって代物だ。まさか犯罪なんて犯してないよな?」


それを聞いて僕達は、ほっと一息つく。


(良かったですね。これでひとまず街に入れますよ。)

(そうだね。何時間も待った甲斐があったね!)

(……)


ここに来る前は日本という超安全な国にいたのだ。犯罪なんて犯してるはずがない。僕達にとっては通過儀礼みたいなものだ。


(……あの…)


(すごいね異世界って!あんなもので犯罪履歴が分かっちゃうなんて!)

(ですね。)


(あの…)


「それじゃあこいつに一人ずつ触れていってくれ。」

「じゃあ、はい。」


そうして小栖立さんが水晶玉に触れる。すると目の前には半透明な画面が映し出される。


おぉ…なんかステータスみたいだ。


「犯罪履歴は…ないな!通ってよし!」

「どうも…」


そう言われ小栖立さんが門番の人の横を通ると「物語くん早くこっち来て!すごいよ!!」と目を輝かせながら大きく手を振っていた。


さて…次は僕が…


「―あの!」

「?どうしたんですか?」


突然葛葉さんが声を上げる。振り返ると葛葉さんがプルプルしていた。正確に言うと物凄く震えている。


「え?だ…大丈夫ですか?」

「ご主人…」


どうしたのかと思い声を掛けると、…


「わ、私、もしかしたら入れないかも…」

「・・・え?」


小さい声でそんな事を言い始める。


「なにか悪い事でもしたんですか?」

「い、いやぁ〜した…ような…?」


話を聞くところによると、日本で生きてきた中で結構際どいことを多々やっていたので犯罪履歴があるかもしれないとのこと…


「…はぁー、思い当たるふしとかないんですか?」

「う、う〜ん…あ!小学生の頃パチンコ店に入って、大儲けしました!」

「よくバレませんでしたねそれ。」

「へへ…」


笑い事じゃないわ。


閑話休題


「ふむ…よく分かりました。」

「!ご主人…!」


キラキラした目を向けてくる葛葉さん。


「それじゃあ…葛葉さん先行きましょうか。」

「…ゑ?」

「おーい!君達来ないのか?」


門番の人が僕達を呼ぶ。


「ほら、呼ばれてますよ。行って下さい。」

「いやいやいやいや犯罪履歴あったら私どうすればいいんですか!?街入れませんって!!」

「…大丈夫ですよ。」

「!ご主人…!!」


またしても希望に満ちた目を真に向ける葛葉だったが―


「その時は置いていきますから。」

「ご主人ー!!?」


その希望は真の容赦ない言葉によって脆くも打ち砕かれた。


そうして葛葉さんの番…水晶に触れる葛葉さんだったが…


「ふむ……よし、犯罪履歴はないな!通ってよし!」

「や、やった!入れました!!」


懸念に反して犯罪履歴などは全くなかった。恐らくあれはパチンコ店に未成年で入る…などの軽いものは反映されない。


それならどこからが反映されるんだ…?


万引きとか人を殺した、とか?


おっと僕の番だ。


「行くか。」


そう言いながら前に進む。


…その瞬間のことだった。


「ドーーーーン!!」

「な、なんだ?」

「キャーーー!!」


近くでものすごい爆発音が聞こえた。それを聞いた人達は驚き、声を上げる。


そんな中で唯一門番の人達だけが冷静だった。


「はぁ…またか。」


そして続けて二回、三回と爆発が起こる。


いよいよもって意味がわからない。


「おい!ここは頼んだ。俺はあっちをどうにかしてくる。」

「わかった。」

「あと君!」


門番さんが僕を指差す。


「君はもう行っていいぞ!」

「いいんですか…?」

「あぁ、連れの人達も犯罪履歴はなかったしな。そして何より俺の長年の勘が君は大丈夫だと言っている。」


そう言いながら何故かキメ顔になる門番さん。


「俺達の街モリナカにようこそ!それじゃあな!楽しめよ!!」


そう言い残すと門番の人は爆発の聞こえた方向へと走り去っていった。


結局あの爆発ってなんだったんだろう…?


「もう!遅いよ、物語くん!」

「すみません。なんか爆発が起きたみたいで…」


そうして大きな砦を潜り抜ける。


そこは僕達が異世界に来てから初めて訪れた街!


いざ街の中に入るとそこは多くの人で賑っていて―


…なんてことはなく、夜なので人がいません。


「あの…私一つ気づいたことがあるんですけど…」


僕が街を見て少しブルーな気持ちになっていると葛葉さんが声を震わせ下を向きながら話す。


僕達全員が忘れていた…頭からすっかり抜け落ちていたこと…


「今日…どこで寝ればいいんですか…?」


―ビュゥゥゥゥ―




祝フォロワー300人達成!!


いやぁ〜めでたい!皆さんのおかげでついにこの作品もここまできました。


といってもまだ始まったばかりなんですけどね(笑)


これからもより面白い物語を届けていきたいと思っているのでどうぞよろしくお願いします!


コメントや考察などもじゃんじゃんしてくださると嬉しいです!(今までにコメントしてくれた方感謝!)




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