144. 『こんづくし』1巻

【おすすめ読者】

 藤◯・F・不二雄ファン、ケモナー(初級~上級者まで)、百合オタ(きらら系)



◆『こんづくし』(1)森長あやみ


 化け狐たちが通う女子校に人間の女子が潜入! これはメルヘンなお話になるのかな~……なんて幻想は開始3ページで打ち砕かれます。

 とにかく治安悪すぎ! そして主人公が割とクズい! でも面白いのでOKです!


 ポップで可愛らしい絵柄と同時に特徴的なのが、藤子・F・不◯雄を彷彿とさせるキャラの表情やリアクションです。ほんのりブラックでコメディタッチな作風とも相まって、抜群の相乗効果を生み出しています。



 主人公いばらが狐に変装した人間というのが本作の起点であり主軸です。狐をもあざむく悪知恵と、無駄に高いDIYスキルを駆使しながら、次々と訪れる正体バレの窮地を乗り切る様は痛快です。


 一方で、いばらの正体を唯一知るクラスメイト・ススキとの秘密の共有も、百合オタ的に高ポイントです。ギャル特有の距離の近さと愛嬌を活かした絡み、そして醸し出される相棒感に尊みを見出さずにはいられません。



 そんなキャラたちの魅力を十二分に際立たせるのが、卓越した脚本力です。


 基本的に一話完結なのですが、高火力な小ネタを緻密に積み重ねながら、抱腹絶倒のオチまで突っ走る構成には死角が見当たりません。

 こんな細かいところまで前フリだったのか! みたいな驚きと、鮮やかな伏線回収には心底惚れ惚れします。


 矢継ぎ早に繰り出されるギャグのワードセンスも相当なものです。順を追って感想を書こうとすると、ほぼ全コマがツッコミの嵐なってしまうので、以下かいつまんでお送りします。



 第3話は「公共の場で自然な姿になったら捕まる」「労働してる時の人間は本当の人間じゃない」などの説得力、ケモナーへの負の信頼感、そして教頭先生(好き)のオチまで完璧。


 二人きりの部活立ち上げという、今後にも関わる重要イベント発生の第5話も注目です。「絶対人間絶滅部」「苦行同好会」とかいうパワーワードに笑いのツボを撃ち抜かれました。


 続く第6話もススキ→いばらのしっとりした感情が感じられていいですね~。もう入籍すればいいのでは?(名推理)登場キャラ全員倫理観やべーのしかいないのは素直に草です。最後は教頭先生が大活躍で読者もニッコリ。



 巻末の四コマ集やキャラ紹介も必見。本作の発端となる事件がまさか原作者の実体験とは驚きです。ワギモコ何なんだお前は!(こっちが聞きたい)

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