79. 『健康で文化的な最低限度の生活』13巻

 だいぶ時間を空けてしまいましたが、ようやく読めたよ最新刊。



◆『健康で文化的な最低限度の生活』(13)柏木ハルコ


 ケースワーカーの視点から生活保護の問題を描く意欲作。前巻に引き続いての水害編。引きこもりの女性・かおりを中心とした緊迫のドラマが展開されます。


 堤防決壊で荒川周辺が水没。平和な時ですら日常を送るのに精一杯な要配慮者たちが、災害時にはより悪い立場に追いやられるのは、見ていて胸が痛みます。



 避難所となった学校の内外で起こる出来事は緊張の連続で、巻の中盤までは読者も気の休まる暇がありません。


 香さんのケアには困難が相次ぎましたが、救いの神=いつも頼りになるはんさんの登場で、やっと光が見えてきます。えみると読者の気持ちをリンクさせるのが本当に上手いです。


 一方の問題児・たん行方不明か!? と思いきや、安定のムーブで草。いつぞやの石橋いしばし確保の件でちょっと上がった株を、自ら下げに来るとは律儀な(笑)。



 水没したまま水が引く目処も立たず、夏場の避難所にはご遺体の安置場所もなく、絶望感漂う描写も。


 そんな中、ようやく得られた休息にほっとひと息。水没地区の外には忘れていた日常が広がっている、当たり前だけど不思議な感覚。

 半田さんの奥様も思いやりがあって、それでいて自然体で。ああ、これは間違いなく夫婦ですな~と納得します。



 苦境にありながら受給者たちを心配するえみる。責任感の強さは美点であると同時に、自らを追い詰める難点でもあります。


 何が正解かわからない中で、その場その場の判断を下していくしかないと、ケースワーカーの心構えを説く半田さん。こんな上司が欲しかった……(涙)。



 ピアノを通じた、香さんと男の子の交流に心洗われるも束の間、突然やって来る別れの時。

 再び闇の中へと投げ出された香さん。「迎えに来る」の意味とははたして。ラジオやら部屋のポスター(前巻の第112話)やらピアノの曲やらと、伏線らしきものはありますが、まさか福山だったり……?

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