60. 『【推しの子】』16巻〈完結〉/『令和のダラさん』5巻/『SHIORI EXPERIENCE』23巻

 私も誰かの星になりたい人生だった……。



◆『【推しの子】』(16)〈完結〉赤坂アカ/横槍メンゴ


 「どのキャラのルートも攻略しきれなかったノーマルエンド」とは言い得て妙。

 仮に第百五十五話の前半(おかえりなさい)や、第百五十七話(アクルビスヤァ)で終わっていれば、ハッピーエンドに感じられたかもしれませんね。


 エンタメとして満足できる結末かはさておき、物語を通底したメッセージには少なくとも納得はできました。



 アクアの嘘がルビーたちの未来を守り、ルビーたちの嘘が私たちの現在を支える。


 ルビーを含め、誰一人として見た目ほど立ち直ってはいませんし、完全に立ち直ることもないでしょう。地上の星として道を示さねばならないから、歯を食いしばりながら、かろうじて自分を奮い立たせているのです。



 何故そう思うのか。

 彼らの姿こそ、喪失と向き合い、絶望の中で足掻あがき、やせ我慢と空元気でどうにか日々を生きている私たち自身でもあるからです。


 それでも何かを創造し、表現し、夢のような絵空事でみんなに希望を与える、そんな推しがいる世界は、人生は素晴らしいのだと、私は結論付けます。



 以下独り言。アクア×ルビーはともかく、あかね×かな成就しなかったのはつらいなー。もうアクア×カミキでいっかー。

 完結オマケ。掲示板でメルト君いじられててフフッてなる。




◆『令和のダラさん』(5)ともつか治臣


 伝奇ホラーコメディ。しょぱなから化け猫と祟り神と男の娘がチームを組んで、先生たちの代理婚活とは斬新な。


 ダラさんの本名が判明するとともに姉巫女まさかの復活。因縁の姉妹対決でお披露目された日向ひなたの憑依フォームはロマンの塊ですね。


 順調にマスコット化が進むまたぎさん。中抜きされる(笑)信心を集めるため、子どもたちを誘導して肝試し作戦を決行。ダラさんに本人バレはギリギリセーフでしたが、完全復活はいつになることやら……。


 他にもプール回や自由研究など、夏にまつわるエピソードが目立つ巻でした。

 中でも、美和みわかおるのお絵描き交流には感動。何かを作り続けることって尊いですね。


 最後は、緻密なオカルト設定が楽しく学べる「おしえてダラさん!」コーナー。とても濃厚で充実した内容でした。




◆『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』(23)長田悠幸/町田一八


 フェス開幕。駆け付けた「シオエク」メンバーの親御さんがそっくりすぎました。

 前巻最後でいけ好かない対応の「ピートム」をフルボッコ宣言するじょうが頼もしいです。


 そして本巻のメイン「生きし地に」登場。

 オーディションを打ちのめす歌声の描写の凄まじさ。しゅうとエイミーの共依存から生み出された呪詛が、会場を丸呑みにする様はライヴを超えた一大儀式でした。

 これぞまさに伝説。目の当たりにしたしのぶが心折れるもやむなしか……?

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