56. 『ババンババンバンバンパイア』1~9巻

 アニメ化&実写映画化も決定しているBL=ブラッディ・ラブコメ(←公式)は、ヤンキー物で名を馳せ、原作付きでBLにまで挑んだ名作家さん会心の一作です。



◆『ババンババンバンバンパイア』(1)~(8)奥嶋ひろまさ


 銭湯で住み込み労働する吸血鬼の正体は、かつて織田信長に仕えたもり蘭丸らんまる。一家の一人息子・ひとの血を狙って権謀術数を張り巡らすのですが、目論見がことごとく裏目に出るのが面白すぎます。


 物語は徹頭徹尾、主人公の蘭丸を筆頭に、愛くるしいおバカさんたち(失礼)が百花繚乱のカオスを繰り広げます。男も女もそれぞれの恋心や思惑が入り乱れて、終始しっちゃかめっちゃかです。混ぜるな危険シチュが多すぎる……!



 純愛一直線で情に脆いキャラクターたちみんな大好きですが、とくに脳筋ヤンキーのフランケンと、ツンデレギャルのカオルがお気に入りです。超の付くおおらかさで不審者たちを一人残らず受け入れる銭湯一家も素敵!



 隙あらば挟み込まれる昭和~平成カルチャーネタや、戦国~幕末の偉人から近代の文豪たちまで登場する歴史ネタもいい塩梅に興味を引きます。


 個人的に一番のツボは、5巻でのとあるヴィランとの死闘です。滅茶苦茶シリアスな場面なのに、上着を脱ぎ捨てた瞬間の◯ッ◯◯◯ッ◯には声出して笑いました。後に再登場してツッコまれていたのもウケます。




◆『ババンババンバンバンパイア』(9)奥嶋ひろまさ


 ここからは最新9巻の感想です。


 前巻の引きから満を持して催されたひとくんの誕生日パーティ。招待されたゲストは主要人物勢揃いの豪華メンツ。前から思っていましたが、ママの料理スキルすごいですよね?


 プレゼントタイムはカオル安定のツンデレが愛おしい。長可ながよしのセンスが相変わらずおかしいですが、李仁も満更ではないのが笑えます。蘭丸らんまるの危機に駆け付ける鬼ムサシはグッドタイミング。芳醇な16歳も今はデコチューで我慢。



 クリスマスに指輪プレゼント……坂本さかもと先生、その言い訳はいくら何でも無理があります(平常運転)。蘭丸&李仁の初詣はエモいなぁ……。


 バレンタイン回は青春たっぷり。フランケンもカオルもかわいい。李仁くんピュアだけど、カオルのチョコを鎮静剤扱いは草なんだ。蘭丸に贈ったあおいちゃんの力作がよもやのオチで爆笑。またカオスが加速しそう。



 フランケン、ついに留年を打ち明ける。李仁くんの反応ときたら、本当にいい子すぎます。兄貴から父親にランクアップ(?)。とりあえず卒業とバイト先も決まってよかったですね。


 相変わらずネットに毒されすぎの長可。しかし、娘やダンピールの話をするこの前フリは……案の定、新学期早々に衝撃の出会いが訪れます。



 巻末に収録の『軍服さん~吸血鬼と恋~』は2021年発表の読み切り。現代社会に溶け込む幕末生まれの吸血鬼という設定が『ババンババンバンバンパイア』の下敷きになったのは明らかのようです。



 長々と語ってしまいましたが、ストーリーも人間関係もハチャメチャなのに、主人公・蘭丸の目的意識が最初から一切ブレていないのがすごいと思います。そんな一本芯の通ったお話作りこそが、本作の傑作たる所以ゆえんなのだなと感じました。

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