23. 『はっちぽっちぱんち』3巻

 細やかな描写に惹かれて、何度も読み返してしまいました。



◆『はっちぽっちぱんち』(3)嵯峨あき/カツラギゲンキ


 女子格闘の絶対王者REINAが次世代の旗手を選び抜く。激闘必至のリングに放り込まれたのは、危うい暴力衝動を抱えた女子高生・キホでした。



 よもや、の引きで前巻から引き継いだ勝負の行方。キホVSらぶは順当な決着。歴戦の猛者をもおぞ気立けだたせる狂気……毎回思いますが、主人公のしていい顔じゃないんだ(ガクブル)。


 試合後「殴れなかった」でいじけちゃうキホちゃん可愛いね(錯乱)。レミのKOシーンでショックを受けているキホ、そして笑顔で仲直り……キホ×レミ確実にキてますよね?



 アマレス王者ニーナ参戦。本人以上にトレーナーの老紳士が癖強で笑。百合に挟まる心配がないのはポイント高し。この辺りからキホ&らぶの微笑ましいキャッキャウフフが増量傾向で大変健康にいいです。



 一方、キホの狂気には母親も気付いていたことが明確に。「新しい檻」とは穏やかではないですね……。介護担当の阪東橋ばんどうばしさんいい人。リングを降りた普段の人柄も描かれるのが、この作品の良いところだと思います。


 さて、この第18話には百合オタの観察力が試される場面がございます。

 一見して、REINA様と秘書の坂本さかもとさんがワイングラスを交わしながら会話するだけのシーンのようですが――


 ①扉絵の二人の視線と表情

 ②「妖艶な美しさに~」という連載時のアオリ

 ③コマ端に見切れたベッドに枕が二つ

 ④登場時点でバスローブ姿のREINA様

 ⑤コルクを抜く前後でREINA様着用のブラがいずこかへ消えている


 これは何もない方がかえって不自然というもの。こういったさり気ない描写で関係性をほのめかす業前、実に心憎いです。



 そして本巻のメイン試合、キホVS瑠美子るみこ。クリーンヒットで初ダウンを奪い会心の笑顔を見せるキホですが、不可解にもファイトスタイルを切り替えた瑠美子るみこを相手に苦戦します。


 明かされる瑠美子るみこの凄絶な生い立ち。抑え切れない殺意が生んだもう一つの人格・クロの存在こそが急変の真相でした。


 狂気と狂気のぶつかり合い。しかしその本質は、理由ある殺意と目的なき暴力です。結果は明白でした。去りゆく者がまた一人。前章のあいもそうでしたが、物の哀れを感じます。



 暫定トップ対決は予想以上の隔たり。ミヤの猛攻を事もなげにさばき切るキラに死角はありませんでした。このレベルの選手がまだ何人も控えているのが恐ろしい。次巻、キホに試練の時が訪れます。



 瑠美子るみこのプロフィールがスカスカで悲しみ……。今後この子はどのように生きていくか。役目を終えた半身が言い残したように、プロゲーマーの道を目指すのでしょうか。穏やかで幸せな未来を願ってやみません。

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