料理もできると言えばできる方な後輩美少女ダンジョン配信者とライブ終わりの先輩冒険者と料理においても先輩冒険者
「サクラ先輩、ライブお疲れ様ウサー!」
明らかに持ち込まれたであろうテーブルと椅子のお誕生日席に座る……否、縛り付けられた巫女服のダンジョン配信者――巫女乃サクラ目掛けて大量のクラッカーによる紙吹雪が吹き荒れる。
「おつかれ、サクリャ」
第二波。
「お疲れ様でーす」
第三波、駆逐艦主砲の空砲による紙吹雪の祝砲。
着弾……――今!
「にぇ――!?」
//テーブルと椅子が吹っ飛んだんだが
//だからテーブルの上に何も置いて無かったのか
//ほらな吹っ飛ばねぇ
祝いの紙吹雪はまだまだ止まない。第四第五と続いていくダンライメンバーによる祝福は配信画面を紙吹雪で埋め尽くしても
「長ぇって!
蓄積ダメージを攻撃へと転化する必殺技で紙吹雪を巻き上がる桜吹雪へ変え、拘束から解放されたサクラが配信画面に映る。
//みこPONライブ最高だったよ!!
//思い出に残るライブをありがとう
//次は現地チケット当選してみせるから次のライブ待ってます
「お? おぉ……ライブの感想コメントがたくさん流れてくれんのは嬉しいんだけど皆どこいったん!? 卯佐美とレイしゃんしかいないんですけど!」
「帰ったペコ」
「帰った!? は、薄情なやつらだにぇ……」
「正確にはちゃんとした打ち上げの準備に向かった。だけどね~」
「え、え?」
「レイ先輩ネタ晴らしが早過ぎるラビ」
//レイしゃんだ!
//艦長がいたとこまでは見えたけど、後は紙吹雪が凄くて声しか映ってない
//レイしゃんってことはお料理コラボ!?
現在配信画面に映っているのは本日の主役と書かれたタスキを掛けた巫女乃サクラとウサ耳カチューシャの間に小さなコック帽を被った卯佐美ともう一人。
ウルフカットの黒髪に狼のケモ耳を生やし、黒地に王冠と牙の模様が入ったへそ出し改造セーラー服のスカートにからモフモフな尻尾を覗かせている少女。
「そうかな~?」
「そうペコ」
「じゃ、今の無しって事で」
「できるか! ってかサクラのお疲れ様会って聞いてきたんですけど」
「合ってるよ?」
「うん。お疲れ様会と打ち上げは別ピョン」
//なるほどココはみこPONだけを労うお疲れ様会の会場と
//どーゆーことだってばよ
//よく見たらレイしゃんがよくお料理配信してるダンジョンじゃん
ソロライブを終えた巫女乃サクラを労うお疲れ様会の会場として選ばれたダンジョン『美食の大海原』は事前準備の小部屋から繋がるボス部屋を基点に陸海空と様々な環境の階層へと移動して探索し、集めて来たドロップアイテムを用いてボスへと挑む一風変わった構造のダンジョンである。
「えっとじゃあレイしゃんの手料理を食えるってことでOK?」
「違うよ?」
「にぇ、違うの!?」
「フッフッフ、今回料理を作るのは卯佐美だピョン。レイ先輩はダンジョンのゲスト機能で
説明しよう! ダンジョンのゲスト機能とは原則個人かパーティに紐づいて記憶される攻略度を無視して
「なんでもリスナーに料理ができるのか疑われて、サクリャの労いついでに卯佐美が料理の腕を証明しようって事で急遽お疲れ様会が企画されました!」
「おい、ぜってーサクラの方がついでだろ」
「あ、バレたペコ?」
//いったい何サラダが出るんだ……
//何かの丸焼きにスレ常連の魂を賭けるZE
//まさかラギアを使うなんていいませんよね?
「あ、ウチまだ挨拶してなかった。ダンライの四獣士が一人、
「略式ウサ?」
「今日の主役はウチじゃないから」
「サクラ先輩も挨拶しとく?」
「しねぇわけにぇーだろ。アイドルダンジョン配信者ギルド『ダンライ』の零期生! スーパーエリート冒険者の巫女乃サクラでーす。よろしくにぇ!」
挨拶を終えて再び取り出されたテーブルと椅子に今度は縛り付けられずに座るサクラを置いてボス部屋の半分以上を占めるキッチンへ移動した卯佐美とレイが配信画面に映る。
「はい。と、いうわけでウチはキッチンの機能を説明する以外に助言せず見守っていこうと思いまーす」
「なんか高級ホテルのレストランでもビックリな設備マシマシのキッチンぺこなんだけど」
「ウチ、頑張った」
何を隠そうこのダンジョンはドロップアイテムは全て食材アイテムであり、ボスの
//簡単な料理でも倒せるとはいえとんでもねぇな
//まぁ料理のリアクションでボスにビームとか吐かせてたし
//ボスを倒して代わりにレイしゃんの料理食いたいと何度願った事か
「んじゃまずは前菜のサラダを作ってくラビだけど皿ってどこウサ?」
「そっち」
取り出した皿を台に置き、卯佐美はアイテムボックスの黒い穴から野菜を放り投げた。ちなみにこのダンジョン、食材の持ち込み可である。
//投げられた瞬間空中で刻まれて皿に盛られてく……
//なんで皿から零れないんだ
//前菜の量か、これ
「そうそう配膳ロボあるから使ってみて」
「猫じゃなくて狼の顔になってるピョン」
「ポイントでカスタマイズできるからね」
ファミレスで料理を運ぶロボットの顔だけデフォルメした狼にしたモノが山盛りのサラダを苦い顔したサクラの元へ。
「げぇピーマン入ってるにぇ……」
離れた席からの嘆き声に振り返るレイ。
「卯佐美、生のピーマンはちょっとダメだよ」
「大丈夫ピョン。糸に火属性付与して刻んだから火は通ってるラビ」
「そういえば湯気が出てたような?」
「米を研いだから炊きたいウサだけど土鍋は……あったペコ」
//なるほど火属性の糸で切れば切りながら火を通せ……る?
//あれ温野菜のサラダだったんか
//土鍋と寸胴鍋が宙に浮いてんだけど
卯佐美の操る糸により空中へ固定された土鍋と寸胴鍋に幾重もの魔方陣が多重展開され、黒い球体が火に炙られている様にしか見えない光景が配信画面に映し出される。
「卯佐美、キッチンって何の為にあるか分かってる?」
「冷蔵庫とか色々あって糸を固定し易くて楽でいいピョン」
「いやそうじゃなく」
「レイ先輩、かん水ってあるラビ?」
//小麦粉らしきモノを水でこねてようやく料理らしき光景に
//寸胴鍋、小麦粉(仮)にかん水……もしかしてラーメン?
//ところでボスの姿見えないような
本来は部屋の奥で鎮座しているボスの姿が見えないことを指摘するコメントに反応してか現在の映像をワイプにして右下に表示した状態で映像が巻き戻った。
そして、筋骨隆々で和服を纏う巨漢の男が映ったかと思った瞬間――
「『邪魔』」
――画面が
//配信前にボスが討伐されてて茶葉
//恐ろしく速い首狩り、俺でなくても見逃しちゃうね
//気付いたら中太ちぢれ麺が打ち終わってる
「まぁ麺も糸みたいなもんペコだから糸スキルの応用で打てるピョン」
「まぁ鎖も太い金属の糸扱いだから中華麺も糸扱いでも不思議は無い」
//レイしゃんツッコミ放棄しないでもろて
//ピーマン苦手なみこPONが美味い美味いって食ってんだけど!?
//山盛りサラダ完食!
「お代わり!」
「用意してないラビ」
「にぇ!?」
「いやもう少しで料理ができるから待つピョン」
卯佐美の声に呼応して
//米が立っててメッチャ美味そうな炊きあがり
//なんだろう寸胴の白く濁ったスープから妙な威圧感を感じる
//白湯スープ御飯……なわけないか、麺打ってたし
――ならない。
複合魔法により宙に浮かぶ熱湯へ打ち立ての麺が投下され、アイテムボックスから取り出された肉の塊が空中で刻まれて白米の上へ。
「スキレットとかもあるんだけどな~」
「火属性エンチャして切りながら焼いた方が時短になるピョン」
「ちなみに何の肉?」
「ラギア」
「えっとドラゴンの胃だったよね。前の焼肉で食べたけどスッゴイ美味しかった」
//そうですよね、ラギアに決まってますよね
//湯切りされた麺が寸胴に入った……
//量がおかしい
寸胴鍋から寸胴鍋へ濾された白湯スープへバリカタで茹でられた面が落ちると大量のかまぼこにメンマ、焼きラギアがトッピングされる。
「完成ペコ」
「卯佐美には一度キッチンの意義について尋ねたいとこだけど、料理名を聞こうか」
「希少部位! 焼きラギアの鍋盛り丼と寸胴盛りリュウコツラーメンってとこウサ」
「一応サクリャもこのあとの打ち上げに参加するんだけど?」
「あ」
「そうだった。このあと打ち上げもあるんだったにぇ」
//リュウコツって竜骨!? ドラゴンラーメンじゃダメだったん?
//鍋は調理器具であって丼容器ではない
//メンマの材料って確か筍……
「じゃあ実食は打ち上げでやるピョン。打ち上げはダンライの公式チャンネルの枠でやるラビだからこの配信はここまでにするウサ。
「おいそんなことより麺が伸びる前に早くアイテムボックスに仕舞うにぇ! あとPONはヤメロって」
「鍋丼の方も冷める前に仕舞っとくね? 乙ペコPONレイン~」
//おつPON
//おつレイン~
//おつPONレインペコ~
――本日の配信は終了しました――
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