幽霊も恐怖する美少女ダンジョン配信者
「う~さ~め~し~や~」
真っ暗な配信画面に下から光魔法で照らされた卯佐美の顔が映る。
//あら可愛い
//光魔法を懐中電灯代わりって器用な真似するわ
//暗闇から突如あらわれるウサミン……可愛いんだけど戦闘力考えたら一番なホラーな気する
「ふへへ、可愛いとかなに本当の事言ってるペコ。いいぞ、もっと言ってくれラビ」
褒められて気を良くした卯佐美は早々に頭の天冠――幽霊の頭に付いてる三角のアレを投げ捨て、久々のスクショタイムへと時間を費やした。卯佐美の光魔法だけを光源に謎の呻き声が流れる暗闇を背景にして。
//もしかしなくてもこのスクショタイム中、ずっと幽霊狩ってる?
//呻き声が不穏過ぎてスクショに集中できねぇ
//うさめしや……ウサギ料理店?
「おい、今共食いって言ったヤツいなかったかかピョン?」
//言ってない
//誰もそこまでは言ってないって
//声が……止んだ
卯佐美から放たれた威圧は配信画面先にこそ届かなかったが、卯佐美のいるダンジョン『墓地墓地悪霊魔入り』に湧く
「なんか明るくなってきたペコ」
//コメントに過剰反応したら敵が全滅してて茶葉
//ここって確か敵を倒すと明るくギミックがあったはず
//西洋風墓地だけど幽霊も西洋なかんじだったの?
「え? ドローンの方見てたラビだからよく見てなかったウサ」
//ノールック!? ってウサミンだしな~
//もしかして幽霊苦手……だったらこんなダンジョン来ないか
//お化け屋敷は平気ですか?
「あ~ホラーで言ったら普通の遊園地とかにあるお化け屋敷が一番苦手ピョン」
次の階層を目指し西洋風の墓石が並ぶ道を卯佐美は進む。
//やっぱりヒトが作ったモンが一番怖いよね
//ちょっと意外
//富士山の見える遊園地にあるの行ってみて
「うっかり攻撃して壊しちゃいそうで怖いペコなんだよね」
//そっち!?
//それ一番怖いのはお化け屋敷のスタッフでは……
//ウサミンが一番のホラー
「おい、どーいう意味だピョン。っと、階段あったラビだから次の階層に進んで行くウサ」
階段を下りた先も暗闇に呑み込まれて……はいなかった。
//薄暗い
//なんか鬼火っぽいの浮いてて少し明るいな、青いけど
//あれは……ゴブリン?
宙に浮かぶ青い炎と共に現れたのは身体が半透明のゴブリン――
それどころか首も無い。より正確に表すならば首から上が無かった。
//ドローンに鑑定スキル搭載されてて良かった
//ゴブリンで合ってた
//恐ろしく速い首狩り……いや、どっちだ? 最初から首無しかそれとも
「ん? まだ卯佐美は狩ってねぇペコだけど」
首無しゴブリンの亡霊は鬼火が増えるのに合わせて数を増し、卯佐美がコメントに返事を返している間に卯佐美を取り囲むまでに。
配信画面に映る景色が青く照らされていく。
「なんでこの階層の墓石は和風ラビ。出てくる幽霊がゴブリンで雰囲気ブチ壊しペコなんですけど?」
//確かに
//あと単純に数が多くて逆にホラー感減った
首とは頭と胴を繋ぐ部位。例え斬首されようと首を狩られようと首の一部は頭にも胴にも付いている。
「って事で、中途半端に残った首置いてけウサ」
そう言って卯佐美が手を横に振ると、頭部の無い小鬼霊種達に辛うじて残っていた首が一斉に飛んだ。
//恐ろしく速い首狩り……首狩り? 分かり難くてもし眼で追えても見逃しちゃうね
//霊種モンスターって基本物理無効だよね
//首が飛んだのに生きてる!? いや、幽霊だから生きてはないんだけども
「これ本体は青い火の玉っぽいペコだな。よし、おめーの首は上から三割んとこって事で」
斬。
//ここに新たなる無駄知識『鬼火の首は十分割した上から三割の所』が生まれた
//七三
//物理攻撃で幽霊って倒せるモンなの?!
「卯佐美が使ってる『
明るくなった和風墓地階層を進みながら卯佐美は普段使っている糸が見やすい様に少し束ねて撮影用ドローンに向ける。
//ガチで糸使ってたんだ
//ウサミンの武器、初めて見たな
//面白い話が出来そうな名前してる
「おい、無茶ぶりはやめるピョン」
//今度はコボルトも混ざってんな
//オーガもいるぞ
//気のせいかなキノコの幽霊が見えた様な……
再び階段を降り、西洋式やどこの様式かも分からない墓石が入り混じり統一感を失った次の階層では雑多な幽霊が押し寄せるように湧いていた。もちろん首が……頭部の無い姿で。
多勢に無勢? そんな言葉は卯佐美の辞書には無い。はいそこ、落丁本とか言わないの。
一緒に浮遊する青い火の玉が本体という弱点も割れ、霊種の特性である物理無効も通用しない以前に卯佐美の威圧一つで消し飛ぶ様な存在が幾ら群れようと無駄である。
「失せろ」
//一言で今湧いて出たの全部消し飛んだ
//明るくならないって事はまだ出てくるんか?
//竹の幽霊ってなんぞ!?
霊種モンスターの出現は止まらない。卯佐美が一瞬で全滅させる度に種類を増しては卯佐美へと襲い掛かる……前に狩られていく。
//幽霊シャークだー
//ゴースト・ツーヘッドシャークて、首無しで分かるか
//サメの次は天使か~……いや、お前は幽霊迎えに来る側じゃね!?
「あ、これ墓石がモンスターの発生装置になってるラビだな」
幽霊の海と呼んでも過言ではない程に湧く霊種モンスターを前に、その発生源である墓石を卯佐美は破壊――しなかった。無論、罰当たりだからなどと信仰心から来る理由では無い。
/メカ子さん/ウサミー、目にお金マークの演出入れとくね~
//そっかドロップアイテムが湧いてくるんだから破壊する理由が無いのか
「よくあるトラップのモンスターハウスとかも稼ぎどころペコだけど相応の実力がないと危険ウサだから気を付けるピョン」
/ダンジョン協会/非致〇性ダンジョンで敗北しても命に別状はありませんが強烈な精神的負荷が掛かりカウンセリングを要する場合があり、それにより収入が低下する場合がありますので自分の実力に見合ったダンジョンアタックをお願いします
//大丈夫真似しようにもできないから
//そうだ! メカ子さん、カットイン演出が見たいです
元は荘厳だったと思わせる装飾が所々剥がれ、一部が朽ち『最も恐ろしき存在が――』と刻まれた一部しか読めない巨大な扉を前に卯佐美は振り返る。
/メカ子さん/ウサミー何か大技を一つよろしく~
「仕方ねぇペコな。……お前もドロップアイテムにしてやろうか」
両手を広げ天を仰ぐ卯佐美に向かって金貨が降り注ぐカットインが入り、幽霊の海が真一文字にズレた。
//振ってる金貨が動いてる
//ありがとうございますありがとうございますありがとうございます
//あの、後ろのボス部屋の扉まで斬れてますけど……
撮影用ドローンが上空から見下ろす画角から卯佐美の背後へと回りボス部屋を映すと中にいた卯佐美によく似た影が首を境にズレ、宝箱が現れる。
「え~と……ダンジョンクリアしちゃったペコだから今回の配信はここまでにしとくウサ。
//おつウサ~
//おつピョン~
//最も恐ろしき存在で……中にいたのがウサミン?
――本日の配信は終了しました――
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