6 習慣

 あれからしばらくして俺達はゲームセンターに辿り着いた。

 此処のゲーセンは敷地が広く、カラオケやボウリングなどが併設されている事もあり、此処に来れば何かやれる感が満載である為、渚達とも偶に来ていた馴染の場所だ。


 とはいえ馴染んでるのはその場そのものだけであり、こうやって男女二人でとなると新鮮な気持ちになる。

 これまでも何度もあった筈なんだけど。


 で、そんな新鮮な空気のまま俺達は未経験のスポットに立ち寄っていた。


「これ……入るのか?」


「うん、今なら堂々と入れるしね」


 眼の前にあるのはプリクラである。


「さっき言った通り興味はあったんだ」


 さっき。

 先程の俺は頑張らなくてもいい云々の話をはぐらかされた後、話題の転換先としてこれから向かうゲーセンの話をした時にプリクラの話になった。


 今までの俺達には縁が無かった代物だ。 


 この手のルールが俺達が通う店限定の話なのか、全国的な話なのかは知らないけど、プリクラは男性だけでの使用は禁止となっている。


 その理由は分からないけど、以前そういう話になった時のマコっちゃん曰く、男だけで入って馬鹿騒ぎしたりアホな事したりする連中がいたんじゃないかっていう話を、俺は彼女と入りましたがってのを微妙にアピールしながら話していた。

 あいつ一回しばき倒していいかな。


 まあとにかく元々男連中だけで使うつもりなど無かった訳だけど、そういう意味で縁が無かった訳だ。


 ……そういう理由で縁が無いという話であれば、それ即ち女の子との縁が無いという事になるのでなんか考えたくないんだけど。

 マコっちゃんの煽りが遅効性で再び突き刺さってきたな。



 ……まあこうして今回縁ができている訳だけども。


 とにかくそんな訳で、俺達にはこれを利用する権利がある。

 うん、あるんだよ。


「……入んないのか?」


 なんとなく渚から入っていくだろうなと思っていたわけだが、中々入っていく様子はない。

 そして俺の問いに渚は答える。


「あ、いや、入るんだけど……なんかこう、入って良いんだっけ? ってなっちゃって」


「今なら堂々と入れるって自分で言ってただろ……いや、まあ言いたい事は分かるけどさ」


 まあ、多分これは仕方がない。


「今日半日過ごしてみてさ、やっぱ対人関係以外でも大変だったりしたんじゃね?」


「まあね。まあ大変って言うのもおかしいかもだけどさ」


 渚は静かに頷く。


「やっぱ外では男ってのに慣れてるから、ふとした時に引っ掛かるんだ。もうやらなくて良い事に引っ張られる」


「そりゃずっとやってきた事と違う事をする訳だからな……訳わからねえ違和感みたいなのは残るか」


 当然そんな立場に立った事が無いのだから、本当に分かってやれてるのかは分からないけど。

 それでも。


「ま、少しずつ慣らしていこうぜ。手伝える事ならいくらでも手伝うから」


 やれる範囲で手伝う事くらいは出来る筈だ。


「そんな訳でやろう、お前が女じゃないとやれねえ事」


「……うん、そうだね」


 そして俺達はプリクラ機の中に足を踏み入れる。


「っていうか、プリクラやるぞっていう空気じゃないよね? なんでこんなシリアスな空気?」


「それお前が言う!?」


 ……まあとにかく楽しもう。

 プリクラの事、何も知らねえけど。


 ほんと何も知らねえんだけど、大丈夫?


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