1577年part2 状況把握

1577年、信行が重傷を負い、意識を失ってから数か月が経過した。ようやく目を覚ました彼は、痛みとともに記憶を辿りながら、周囲の状況を理解しようとした。身の回りには、長く忠誠を誓ってきた家臣たちが見守っていたが、彼らの表情には不安が色濃く漂っていた。


信行は、まだ身体が思うように動かない中で、状況を把握しようと勝家に問いかけた。柴田勝家は、信行の状態が安定してきたことを確認すると、これまでの出来事をゆっくりと、しかし慎重に伝え始めた。


「信行様が倒れている間、織田家内では大きな変化がありました」と勝家は語り出した。「光秀が裏切り、信忠様をも討ち取った後、私がなんとか信行様を救い出すことができましたが、その間に羽柴秀吉が急速に力をつけ、織田家内での影響力を増しています。」


信行は、秀吉が権力を握り始めたことに驚きを隠せなかったが、勝家はさらに続けた。「秀吉は、織田信孝様を表に立てることで家中の支持を集め、事実上織田家を支配しています。信孝様は信長様の血を引いていることから、多くの家臣が彼を支持しており、秀吉がその背後で実権を握っているのです。」


信行は、秀吉の巧妙な策略に驚きつつも、自分が重傷を負っている間に織田家内で起きた変化を受け入れざるを得なかった。彼は身体がまだ思うように動かない中で、これからどう行動すべきかを考え始めた。


「私が意識を失っている間、秀吉がここまで動くとは思っていなかった」と信行は心の中で苦々しく思った。「しかし、このままでは織田家が秀吉の手に落ちてしまうだろう。何としても、再び織田家を取り戻さねばならない。」


勝家は信行の考えを察し、力強く言った。「信行様、我々はまだ負けていません。秀吉が権力を握っているとはいえ、織田家の未来は信行様にかかっています。ここからどう動くかが重要です。」


信行は勝家の言葉に勇気を得たものの、冷静に状況を分析する必要があると感じていた。秀吉が織田家内で力をつけた背景には、信行に対する不満を抱く家臣たちが存在していることも理解した。信長の血を引く信孝が前面に立っているとはいえ、秀吉が実権を握るこの状況は、織田家の未来に大きな影響を与えることになるだろう。


「今はまだ身体が動かないが、秀吉に対抗するための策を考えなければならない」と信行は決意した。「しかし、まずは自分の状態を整え、再び立ち上がる力を取り戻さなければならない。」


信行は、自らの力を再び取り戻すことを誓い、秀吉との対決に備えるべく、策を練り始めた。織田家を守るために、彼はこれからどのような行動を取るべきか、今一度考え直す時が来ていた。家臣たちの間に潜む不満や対立をどう解消し、織田家の統一を再び実現するか――信行にとって、これはかつてない大きな挑戦となることが明白だった。

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