〜影を超えて〜織田信行の誕生

1551年 信秀の死と信行の決意

1551年、織田信行にとって重大な転機となる出来事が訪れた。この年、長く織田家を支えてきた父・織田信秀がついに亡くなったのである。信秀の死は、織田家内外に大きな影響を与え、家中の緊張を一層高めることとなった。

信秀の死により、織田家の家督は正式に信長が継承することになったが、この決定に対して家中ではさまざまな反応があった。特に、信秀の死を契機にして、家中の一部では不満や動揺が広がり始めた。信行は、この状況に直面し、自らの立場と兄信長を支える責任を強く意識するようになった。

信行は、父の葬儀に際して、兄と共に葬儀の一切を取り仕切り、家中の結束を保つために尽力した。葬儀の際、信長が抹香を仏前に投げつけるという行動を取ったことは広く知られており、家中に衝撃を与えた。この行動は信長の個性を象徴するものであったが、同時に家臣たちに不安をもたらすものであった。

信行は、信長がこうした行動を取る一方で、自らは礼儀正しく振る舞い、家中に対して安定感を示そうとした。彼の行動は、家中の信頼を得るための重要な一歩となり、織田家内での信行の存在感を高めることにつながった。

また、この年、織田家を取り巻く外部の状況も急速に変化していた。信秀の死を受けて、織田家の敵対勢力は、織田家の力が弱まることを期待し、さまざまな動きを見せ始めた。特に、美濃国の斎藤道三や三河国の今川義元は、信長が織田家の家督を継いだばかりのこの時期を好機と見て、織田家に対する圧力を強めていた。

信行は、こうした外部からの脅威に対抗するために、信長と共に織田家の防衛を強化するための準備を進めた。彼は、信長が指導力を発揮し、家中を統一するための補佐役としての役割を果たすことを誓った。

1551年は、信行にとって父の死という大きな悲しみを乗り越えながらも、兄信長を支え、織田家を守るための決意を新たにする年であった。この年の経験を通じて、信行は一層の成長を遂げ、織田家内外での影響力をさらに高めることとなった。

信行は、これからの織田家が直面するさまざまな困難に備え、自らの役割を果たすために、一歩一歩着実に準備を進めていった。家中の不満や外部からの圧力が増す中で、信行は冷静な判断力と強い意志を持ち続け、織田家の未来を見据えて行動していくことを決意していた。