第11話: 遺跡の深淵
朝の光が、遺跡の入り口を淡い金色に染めていた。田中優樹、アラン、エリナの三人は、再び遺跡の探検に向かう準備を整えていた。前回の冒険では、遺跡の外部までしか踏み込めなかったが、今日はその内部に足を踏み入れることに決めていた。遺跡の中には何が隠されているのか、彼らの好奇心と期待が高まっていた。
「今日こそは、遺跡の内部をじっくり探索するぞ。」優樹が意気込みを見せながら、手に持つ大剣の刃を確認した。「前回のような簡単な敵だけではないかもしれない。気を引き締めていこう。」
アランは弓を肩にかけ、側に置いたアイススピアを確認する。魔法の力を持つこの武器は、戦闘時に大きな助けになると信じていた。「前回はあまりにも簡単すぎた。今回はもっと危険が待っているかもしれない。魔法の準備も怠らないようにしよう。」
エリナは矢を鞘に収めながら、慎重に周囲を見回す。「私も準備は万全よ。遠距離からサポートするから、戦闘が始まったら知らせてね。」
遺跡の入り口に立つと、そこから立ち上る古びた匂いが三人を迎えた。厚い苔に覆われた石の壁が、長い年月を感じさせる。優樹は進むべき道を選びながら、遺跡の内部に踏み込んでいった。
「気をつけろ。入り口から先はわからないことが多い。」優樹が先頭を切り、足元に注意を払いながら進む。
遺跡の内部は意外にも広大で、複雑に入り組んだ通路が続いていた。時折、奇怪な模様が刻まれた石の壁が、探検者たちに不安をもたらす。天井からは、神秘的な青白い光が漏れ、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「この模様、何か意味があるのかしら?」エリナが壁に刻まれた模様を指摘した。「古代の文字か、儀式に使われたものかもしれない。」
アランはその模様に興味を持ち、手を伸ばして触れた。「確かに古いものだ。でも、私たちが理解できるものではないかもしれない。」
三人が進むにつれて、遺跡の内部には次第に異様な空気が漂ってきた。突然、通路の先から低い唸り声が聞こえた。優樹は即座に反応し、剣を構えた。「何か来るぞ!」
数瞬後、遺跡の内部から現れたのは、暗い影を引きずるゴブリンの群れだった。彼らの目には、恐ろしい赤い光が宿っており、凶暴な気配を漂わせていた。
「ゴブリンか…!」エリナが矢を弓にセットし、構えた。「数が多いわ。気をつけて!」
「アラン、魔法の準備を頼む!」優樹が指示を出し、前方に立ち向かう。アランはすぐに魔法の詠唱を始め、アイススピアを召喚した。氷の槍が彼の前に現れ、青白い光を放っていた。
優樹は大剣を振り下ろし、前方のゴブリンたちを圧倒する。大きな一撃が地面を揺らし、ゴブリンたちは苦しげな声を上げながら後退した。一方、アランは氷の槍をゴブリンたちに向けて投げつけ、その動きを遅らせる。
「エリナ、狙撃して!」優樹が指示を出すと、エリナは弓矢を引き絞り、敵の首を狙った。矢は正確に飛び、ゴブリンの一体を射抜いた。
「うまくいったわ!」エリナが自信を持って叫ぶ。戦闘が進む中で、彼女の矢は次々とゴブリンたちを仕留めていく。
優樹はゴブリンたちを倒し続けるが、敵の数は依然として多かった。アランも魔法を駆使して戦闘をサポートし、氷の槍で敵を次々と凍らせていく。戦闘はしばらく続き、ついにはゴブリンの群れが完全に倒された。
「危なかったな。」優樹が息をつきながら、大剣の血を拭った。「さすがに数が多かった。これで一息つけるな。」
「でも、まだ油断はできないわ。」エリナが警戒を続けながら、周囲を見渡す。「遺跡の奥に何が待っているか分からないから。」
「そうだな。」アランが頷き、「でも、戦闘が終わったことで少しは落ち着ける。」と言った。「次に進む前に、少し休憩しよう。」
三人は遺跡の内部で小休止を取り、体力を回復させた。優樹は遺跡の奥に向けて歩き始める前に、エリナとアランに改めて指示を出した。
「遺跡の奥にはもっと強い敵がいるかもしれない。気をつけて進もう。私が前を見ているから、君たちは後ろをしっかり守ってくれ。」
「了解。」アランが返事をし、エリナも頷いた。
三人は再び遺跡の奥深くに進んでいく。遺跡の内部はさらに広がり、神秘的な光景が広がっていた。道のりは険しく、様々な仕掛けが彼らを待ち受けていたが、彼らの決意は揺るがなかった。
次第に、遺跡の奥からは微かな音が聞こえてきた。それは、どこかで人が話しているような声だった。優樹は耳を澄ましながら、その音の正体を探ろうとしていた。何か異常が起こる前に、しっかりと調査する必要があると感じていた。
「誰かいるかもしれない。警戒を強めて進もう。」優樹が声を低くして言った。
三人は音の発信源を目指して進んでいく。その先に何が待っているのか、彼らの冒険はまだ始まったばかりだった。
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