CLOSING BELL 🔔 大引けの鐘がなる時
あしわらん
復興と再生の始まり
4月1日(火)代償
アシベル・オー・カッシーナは先月購入したモンスターに手を焼いていた。
アナリストなる商人に勧められて将来金の卵を生むというモンスターを購入したのだが、それがとんでもない魔物だったのである。
モンスターの名前はフジクーラ。将来を有望視された話題の電線株だった。しかし、アシベルが買ってからというもの、とにかくよく食べるようになり、日をまたぐ毎にものすごい勢いで資産を食い荒らすのである。
維持費だけでもやばい。
もう限界だった。
明日になったらいくら減っているのか不安で野っ原をのたうち回っていると、通りすがりの冒険者がアシベルを蔑んでこう言った。
「そんなに不安なら切ったらええやん、情けな。冒険者の恥だな」
イマドキのサバサバ冒険者※みたいな感じの勇者だった。
最初はなんて辛辣なことを言う人だろうと涙が滲んだが、しかし、彼の指摘は至極真っ当だった。
そうだ。こんな身の丈に余るモンスターを飼い続けたのがいけなかったのだ。
アシベルは自らの失敗を反省し、モンスターと縁を切ることに決めた。
モンスターと縁を切るには決まった術式がある。資産畑に陣を描きモンスターを焼き払わねばならないのだ。加えて火種となる炎を召還するには、自分の小指を切り落とさなければならない。そんなの痛いに決まっている。
だが、アシベルは決心した。
これから切る指は見ないことにした。
見ているうちは切れないからだ。
でも大丈夫だ。この世界の冒険者は、冒険者である限り、魔石の力で失った体の一部を再生できるのだから。
アシベルはナイフで小指を切り落とし、術を唱えた。
「心頭滅却すれば火もまた涼し! 明日は明日の風が吹く!
切り落とした小指から炎が上がった。
モンスターと共に資産の一部も一瞬で燃え尽きて、そして、散った。
あたり一帯に焼け野原が残った。
仕方ない。
こうするしかなかったんだ。
アシベルはしゃがんで足元の灰を一握りする。
こぶしから砂時計のようにサラサラと落ちる資産の灰。
それを儚げに見つめながらアシベルは静かに決意を固めた。
この焼け野原に花を植えよう。
一輪一輪、栄一の花を。
そして、いつかあたり一面を花畑にしよう。
今日ここから、
冒険者アシベルの復興と再生の日々が始まる。
※『イマドキのサバサバ冒険者』
清水俊(作画) / 埴輪庭(原作)
https://comic-walker.com/detail/KC_002964_S?episodeType=first
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