第116話 変わらぬ想いとオーバーキル⑤

(匠刀視点)


 6年会わない間に、桃子が必死に努力してたのは分かってたけど。

『走れるようになったし、泳げるようにもなったよ』という言葉に、正直驚いた。


 俺のそばにあのままいたら、6年経った今も同じだったかもしれない。

 そりゃあ少しは体力がついて、少しずつ色んなことに挑戦してたかもしれないが、素人とプロの違いは歴然だ。


 手から伝わって来た拍動は、とても穏やかなもので。

 6年ぶりに抱きしめてるのに、動揺して脈が乱れるなんてこともない。

 俺は桃子に会えて、居酒屋で見たあの瞬間からずっと、心臓がバクバクしてんのに。


 なんだよ。

 俺だけかよ。

 こんなにも会いたかったのは。


『ちゅーしていい?』

 6年ぶりに口にした言葉。

 すっげぇ緊張して言ったのに。


 色鮮やかに彩られたイルミネーションをバックに、完全にキスシチュだったのに。

 少し驚いて照れただけで、言った俺の方が心臓が壊れそうなくらい暴れまくってるとはな。

 すっげぇムカつくのに。

 なんだろ。

 負けず嫌いな性格が顔を覘かす。


 10年以上も片想いしてたあの頃に戻ったみたいで。

 悔しいのに。

 また惚れさせてみせるという自信が、どこからともなく湧いてくる。


 俺の一途な想いをなめんなよ。


 初恋だけでなく、2度目も3度目も4度目でも。

 何度だって惚れさせてやるんだから。


「ホテルに戻んないとダメ?」

「へ?」

「ここに泊まってけばいいじゃん」

「っ……さすがに、それは」

「6年間遠距離してる恋人同士なんだから、友達だって空気読んでくれると思うけど?」

「っっ」

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