12:00 A.M.

12:00 A.M.

 コンビニに入った狐酔酒は真っ先に飲み物が置いてあるところに向かった。


こんな時間なのに僕たちの他に二人も客がいるようだ。


狐酔酒はスポーツ飲料を手に取って僕に見せびらかすようにした。


「運動してからこれ飲むとマジでうめぇんだ。あとでひと口やるよ」

「へぇー。ありがと」

「あとは、ガムでも買おうかな」


そう言って狐酔酒はお菓子が置いてあるコーナーに足を向けたのだが、そこで店内にいる僕たち以外の二人の客と目が合った。

同級生だ。


「お! 妖風あやかぜ栗原くりはらじゃん。奇遇だなぁ」

狐酔酒に声を掛けられた二人組は驚いた顔でこちらを見た。


「ん? あ、狐酔酒と……さ、佐々木? なんであんた和服なのよ……」

妖風が僕の服装について言及してきた。


妖風のフルネームは妖風緋彗ひすい

地雷系メイクにハマっているギャル、らしい。

けいがそう言ってた。


妖風は『可愛いもの愛好会』という部活に所属している。


「僕の普段着だよ」

僕が答えると、妖風は胡散臭そうに僕を見た。


「小野寺といい、あんたといい……あんたたちの前の学校で和服が流行ってたとか?」

「そうかもね」

「そうかもねってどういうことよ。まぁどうでもいいけど」


話を聞いていた栗原は苦笑いしてから僕に言った。

「こんばんは、狐酔酒君と佐々木君。狐酔酒君はともかく、佐々木君とはあまりちゃんと話したことなかったよね?」


「ないね。この前けいと一緒に可愛いもの愛好会の見学に行ったときに自己紹介されたのは憶えてるけど」

「そうだよねぇ。じゃあ私の名前は憶えてるかな?」


「栗原窓無まどね。妖風の友達で趣味は思考放棄だっけ?」

「完璧じゃ~ん」

栗原はケタケタ笑った。


狐酔酒が言った。

「栗原とはオレもあんま絡みないよな」

「まぁ違うクラスだしねぇ。ってかこの中じゃ私だけクラス違うじゃん。やだ~」

栗原はまた一人で楽しそうに笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る