8:05 P.M.
リビングには二人ともいなかった。
ということはそれぞれの部屋にいるのだろう。
僕たち三人はこのマンションで一緒に暮らしている。
ついこの前から暮らし始めた。
僕らの関係性は兄弟だ。
四人兄弟で、もう一人の妹は実家にいる。
それはさておき僕はまず、けいの部屋のドアをノックした。
「どうぞでゴザル~」
中から返事が聞こえた。
ドアを開けて部屋に入る。
部屋に足を踏み入れてまず目に入ったのは、上半身裸で腕立て伏せをしているけいの姿だった。
「筋トレ中だったか。あとにした方がいい?」
僕がそう訊くと
「それなら最初から招き入れないでゴザルよ。……ふぃー」
けいは腕立てを止めてその場に胡坐をかくと、タオルで汗を拭った。
「で、なに用でゴザルかな?」
「後でちょっと散歩に出てくるってのを言いに来ただけだよ。邪魔してごめんね」
「それは別にいいでゴザルってば。それにしても夜の散歩でゴザルか。いいでゴザルな」
「けいも一緒に行く?」
「うーむ。……いや、遠慮しとくでゴザルよ。今日は朝から色々バタバタしてて疲れたでゴザルからな。また今度散歩するときに誘ってくれでゴザル」
「そっか。分かった。んじゃ天姉にも言ってくるから。おやすみ」
「おやすみでゴザル~。あ、ヤンキーとか不審者には気をつけるんでゴザルよ。もし殴り掛かられたりしても反撃しちゃダメでゴザルからな」
「うん。そうなった時は適当に受け流してさっさと逃げるよ」
「分かってるならいいでゴザル」
けいは満足そうに頷いた。
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