第13話

 教会で新しい魔法の取得の為の勉強が終わり夕暮れになる頃、村の入り口が騒がしくなって気になった俺は行ってみた。


 どうやら森の中のゴブリンの駆除に来ていた冒険者たちが無事に森の中のゴブリン退治が終わって村に戻ってきた。


 まだ完全に森の中にゴブリンが残っていないかの確認作業に数日間は掛かるから村にはまだ居るそうだ。


 20人も冒険者が居ればゴブリンが群れていても問題ないのだろう。それに村の近くの森は村人たちの生活には重要な場所だが、そこまで深い森ではない。


 だから本来ならモンスターが棲み着いてもそこまで多くのモンスターは現れないはずなのだが、今回は村の方にまでゴブリンが現れる事態が珍しいのだ。


 これは大禍月の影響なのか分からない。俺の歳が15歳くらいになってから本格的な大禍月になるのだと、あの時に神様が言っていたと思う。


 それなのにもう大禍月の影響があるとは思いたくないが、今回のゴブリンの騒動はイレギュラーな騒動だとありがたい。


 俺も成長すれば森の中を遊び場にしたいから、本当にモンスターが棲み着かないで欲しいところだ。


 翌日、朝から教会に向かっている途中で冒険者たちが森の探索に出掛けるところに遭遇した。


 「ダンデさん、おはようございます。頑張ってください。」


 「おう!ショウか、おはよう!ゴブリンがまだ居るかも知れないからな!行ってくるぜ!!」


 冒険者たちを俺は見送ってから教会に向かう。教会では子供たちがゴブリンを冒険者たちが倒した事による話題で持ち切りだった。


 そんな子供たちとの会話に参加せずに俺は今日も【ヒール】と【キュアシック】の魔法を覚える為に勉強中だ。


 この2つの魔法を覚えて使える様になれば食べていくのに問題がなくなる。そう言う魔法である。


 流石にすぐに取得する事は出来なかった。この日も一日中、俺は新しい魔法の取得に時間を使うのだった。


 あれから数日経ち、森の中にゴブリンはもう居ないだろうと言うことになり、今日は冒険者たちがインザ町に帰る日だ。


 俺も新しい技術の破断流を教えてくれたダンデのお見送りに来ていた。


 「ショウ。しっかりと稽古をするんだぞ?」


 「はい!」


 「それじゃあな!」


 それだけの短いやり取りをしてダンデは冒険者たちと一緒にインザ町へと続く街道を通って去って行く。


 その姿を見送り終わると今日は久しぶりに教会ではなく外で過ごすことになる。何故ならここ数日間の間は畑に行けなかったからだ。


 我が家の畑のほんの少しの一角に俺が育てている草原に生えている花を植えているのだが、暖かい今の時期なら雑草がそれなりに生えているはずで、今から雑草を抜く作業をしないといけない。


 それに父さんも母さんも日中の畑仕事の時間を減らしていたはずだから、畑が本来よりも荒れているはずだ。


 だからまずは我が家の畑から雑草抜きや畑の手入れを行なっていく必要があるだろう。


 「父さん、どこを手伝えば良い?」


 「そうだな、あっち側をやってくれ。」


 「うん、分かった。」


 父さんが指を刺して示した場所に向かいながら、俺はジョブを畑仕事用のジョブに変えていく。


 「少ないな?」


 父さんか、母さんがゴブリン騒動の時にも定期的に畑仕事をしていた場所なのだろう、この場所は。


 俺は生えている草を引き抜いて、引き抜いて、引き抜いていく。小さな物しかない雑草を纏めながら引き抜いてすぐに俺が担当する場所が終わってしまった。


 その後も父さんから畑仕事をする場所の指示を出して貰いながら、その後に俺は草原の花を育てていた畑の一角の手入れを行なっていく。


 「それにしてもまさか育ててるこの花が薬になるなんてな。」


 ゴブリン騒動の時に習った薬草図鑑に書かれていた本に、今育っている花が載っていた。


 これは偶々だけどこう言う薬草にもなる草花を育てるのにも薬としても使えるし、ジョブも新しく手に入りそうでもあるから、これからも続けていこう。


 俺が管理している畑の一角の雑草を抜き終わり、生活魔法の【プチウォーター】を使って水撒きが終われば、一角にまとめた雑草を【プチファイア】で灰に変えてから畑に撒いていく。


 「これで終わりっと。久々に草原にでも行こう。」


 家に戻って水分補給を済ませてから草籠を持って草原に出掛けた。


 ゴブリン騒動のせいで久しぶりに出掛けた草原だったが、草原の景色の変化はそれほどなかった。だが、今の俺の目には少し前とは見えている物が違う。


 「あっ、これと。これもだ。」


 草原に生えている雑草に紛れている薬草になる植物を丁寧に根っこから抜いていく。


 視界に入り次第、俺は薬の効能がある植物を引き抜いては草籠の中に入れてを繰り返し行ない、草籠の中が薬効のある植物で一杯になると畑に戻る。


 「あとは植えるだけだな。」


 雑草を燃やした灰を混ぜてから畑に小さな穴を開けて、そこに抜いて集めた薬草になる植物を植えていく。


 「うーん、どうするか。」


 しな〜と植えた植物が地面に倒れている。このまま水を与えるのは駄目だと思う。


 土の状態は【土状態感知】のジョブスキルのお陰で良い状態だと分かるのだが、植えた植物の状態が【植物状態感知】のジョブスキルで悪い事を理解した。


 ここからどうすれば良いのかも何となくでしか分からないが、その何となくで俺は行動していく。


 支柱用の木の棒が置かれている場所から支柱用の木の棒と蔦を持って畑に戻る。


 そして、植えたばかりの植物の近くに木の棒を刺してから蔦を使って木の棒に寄り添うように優しく木の棒と茎を縛った。


 これでとりあえずは良いだろう。それからすべての植物を同じ様に木の棒と蔦を使って地面に倒れない様にしてから生活魔法を使って水を上げていく。


 「一先ずこれで良いな。そう言えば回復魔法は効くのか?」


 試しにと1番効力の低い【プチヒール】で試すと、【植物状態感知】で感じた植物の状態は良くなっていた。


 それでもすぐには支柱を外すのは良くないだろう。今すぐに支柱から外せば、植物は再び地面に倒れてしまうはずだ。


 その後、俺は他の植物たちにも同じ様に回復魔法をかけていく。


 そして、まだ畑仕事をしていた両親からお昼ご飯にするからと一緒に帰り家で昼食を食べてからの午後は小川で夕食のオカズになる小海老や小魚を取りに行くのだった。

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